判例・裁判例コラム

休職について説明したにすぎず休職を命じていないとされた事例

東京地裁H25.1.18

バス会社の従業員が通勤中の交通事故で負傷し、欠勤を開始。会社は就業規則で「業務外の傷病により通算して1ヶ月以上欠勤したとき」は「休職を命ずる」と定め、「勤続1年以上の者」の休職期間は3か月と定めていた。この従業員からこのまま休み続けた場合どうなるかを尋ねられ、総務担当者が欠勤1か月、休職期間3か月を超えた場合に復職できないときは自然退職になると説明した。

→会社関係者が休職に言及したのは、総務担当者による上記説明のときのみであるが、この説明がされたのは、欠勤が1か月に至らない時期であるうえ、この担当者には従業員に休職を命じる権限はなかった。よって、総務担当者の発言は単に就業規則上の休職に関する規定を説明したにすぎず、会社が休職を命じたとは評価できない。従って、その後、会社が休職期間が満了したとして従業員を自然退職扱いとしたことは無効と判断

運転手に支給する無事故報奨金は割増賃金の算定基礎に含める必要がある?前のページ

有給取得取得予定日前日の時季変更権行使次のページ

ピックアップ記事

  1. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  2. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  3. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  4. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  5. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    1年単位の変形労働時間制を定める就業規則の不備

    東京高裁R6.5.15引っ越し業者が労使協定を締結して1年単位の変形…

  2. 判例・裁判例コラム

    人事考課に基づく降格・賃金減額の有効性

    東京地裁R4.1.31地道なテレアポ営業に熱心に取り組まず、…

  3. 判例・裁判例コラム

    就業規則に休職期間の延長規定を設けた場合の効力

    大阪地裁R3.7.16社会福祉法人が就業規則で私傷病休職の期間につい…

  4. 判例・裁判例コラム

    中古車買取店の店長が管理監督者にあたるかが問題になった事案

    岐阜地裁R6.8.8中古車買取店の店長が時間外労働割増賃金を請求→店…

  5. 判例・裁判例コラム

    自宅待機中の従業員に対する出社命令

    東京地裁R6.4.24嫌いな人物はとことん追い詰める、高圧的な態度で…

  6. 判例・裁判例コラム

    役員としての重大な不正を理由に従業員としての退職金を不支給にできる?

    東京地裁R6.1.29学校法人において教授等を務めていた職員が大学の…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    有給取得取得予定日前日の時季変更権行使
  2. 判例・裁判例コラム

    自分自身が納得することを最優先し、会社業務への支障を生じさせる従業員の解雇
  3. 判例・裁判例コラム

    不当な復職拒否をしてしまった後、これを撤回するために会社がとるべき行動とは?
  4. 判例・裁判例コラム

    営業担当者について退職後6か月間に限って同業他社への就職を禁止する誓約書の効力
  5. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大阪地裁R6.3.27)

    判例・裁判例コラム

    232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
PAGE TOP