東京地裁R5.12.7
会社代表者が、従業員に対し、上司の業務上の指示に反抗してトラブルを発生させ、業務に重大な影響を及ぼしたなどと告げたうえ、退職勧奨。その内容は、退職勧奨に応じ、翌週に業務引継ぎを終えれば、その後は出勤しなくても当月分の給与と60日分の平均賃金を支払うというものだった。一方、退職に応じない場合、就業規則を理由に訓戒処分と反省文の提出を求めることを予告した。
従業員は退職を拒否したため、会社は訓戒処分をしたうえで、指定した期限までに、上長の指揮命令に従うこと等訓戒処分通知書に記載された指示事項に従い、誠実に勤務し、これが履行できない場合には、いかなる処分を受けても異存ない旨記載された誓約書に署名押印して提出することを求めた。また、会社代表者は、一身上の都合ではなく合意退職とすることも可能であるなどとして、再度の退職勧奨を行った。従業員はその後適応障害を発症
→本件では、従業員について「上長の指揮命令に従わず、上長に反抗的な態度を示し、反省を拒むこと」と評価し得る行為が一応認められるものの、その背景として、上司の事実誤認に基づく断定的で強硬な対応や業務上の不当な対応等があったと認められる。会社代表者は、上司と従業員のメールの共有を受けており、両者の言い分に食い違いがあることを認識し又は十分に認識し得る状況にあり、加えて、従業員から上司が一方的に物事を押し付けようとしており、相談できるような体制になっていないとの申告があったものの、退職勧奨の前に、従業員の言い分を聴取し、上司の問題点を踏まえた対応を取っていない。また、退職勧奨においても、込み入った話はしたくないと述べたり、従業員の反論に対して机を指で叩きながら声を荒げて反論したりしており、従業員に問題点を具体的に指摘したうえでその言い分を十分に聴取したとは認められない。そのような中で退職の条件を提示し、従業員が退職勧奨に応じなかったことを受けて、訓戒処分をし、更に退職勧奨に及んでいる。従業員の言い分を十分に聴取することなく、事実確認や背景事情の確認等が不十分のまま、退職を勧奨したり、誓約書の提出を求めたり、更なる厳罰を警告するなど一方的に従業員に不利益ないし責めを負わせようとするものといわざるを得ず、社会通念上相当なものとはいえない。退職勧奨と訓戒処分は、パワーハラスメント行為に当たると判断
退職勧奨がバワハラになる場合については以下でも解説しています。あわせてご参照ください。
https://kigyobengo.com/media/useful/3409.html





