判例・裁判例コラム

逮捕・勾留中でも「弁明の機会」は必要? 懲戒解雇が有効とされた学校の対応とは【大阪地裁】

大阪地裁R7.9.12
 私立学校の教員が、体育教官室に侵入し、同僚の机から現金1万5000円を盗んだところを、防犯カメラで撮影され、その後窃盗容疑で逮捕・勾留された。学校はこの教員を懲戒解雇。教員は、懲戒解雇の無効を主張して訴訟を提起。懲戒解雇にあたって弁明の機会が適切に付与されていないなどと主張した。
→本件学校の就業規則では、懲戒については懲戒委員会と協議することが定められ、懲戒委員会規則では「事案の調査に当たっては十分な説明と弁明の機会を与えなければならない」とある。
 この点、懲戒委員会委員長となった弁護士は、刑事手続きにより身柄拘束されていた教員に書面を送り、弁明書の提出を求めており、教員も弁明書を提出している。さらに、懲戒委員会委員長は、弁護人となろうとする者として、警察署を訪問して、この教員と接見を行い、事実関係の確認と弁明の聴取を行っている。身体を拘束されている中で、書面及び口頭により十分な説明と弁明の機会を付与したものといえるから、規則違反があったとはいえない。懲戒解雇は有効と判断

 弁明の機会を与えるために警察署を訪問することまでしないといけないのは大変なので、弁明の機会の付与について就業規則に条文をおくときは、通常の連絡手段で連絡がとれないときは除いておくなどの対応が必要だと思います。
 事案の結論としては、懲戒解雇有効と言えると思いますが、刑事訴訟法的には、弁明の機会を付与するための訪問を「弁護人となろうとする者」(刑事訴訟法39条1項)として行ったことについては問題もあるように感じました。「弁護人となろうとする者」にはあたらず、一般接見によるべきしょう。

母親の危篤で勤務開始日の延期を求めた入社予定者!会社は延期要請を拒否。東京地裁の判断は“合意解約”成立?前のページ

入社前日の電話で内定が取消しに! それでも「有効」とされた理由とは?次のページ

ピックアップ記事

  1. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  2. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  3. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  4. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  5. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    就業規則に配転条項があっても職種限定契約であるとされた例

    東京地裁R6.12.10外資系証券会社で私傷病による精神疾患を発症し…

  2. 判例・裁判例コラム

    正社員は賞与5カ月、嘱託社員はゼロ →最高裁“それでも違法ではない”と判断

    最高裁H30.6.1 運送会社で正社員には基本給の5か月分の賞与を支…

  3. 判例・裁判例コラム

    携帯電話の位置情報に基づいて割増賃金請求できる?会社側の反論事例。

    東京地裁R7.7.18医療関係のシステムを扱う会社の営業部門に勤務す…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    従業員が、日時を特定せずに「副主任からいじめを受けている」との抽象的な報告。この…
  2. 判例・裁判例コラム

    退職日を前倒しさせたら“解雇扱い”に!退職日書面に署名があっても同意なしとされた…
  3. 判例・裁判例コラム

    232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?
  4. 判例・裁判例コラム

    部下の上司に対するハラスメントについての懲戒処分
  5. 判例・裁判例コラム

    職場内の盗撮。会社の対応は遅すぎ、被害者と加害者の優先順位を見誤っているとして賠…
PAGE TOP