判例・裁判例コラム

労働者の適性を判断する試用目的での有期雇用契約

東京地裁R6.9.26

広告代理店が人材紹介会社から紹介された労働者を雇用。契約期間を「入社日から1年間」と記載し、「契約を更新することがある(正社員登用制度有)」とする労働条件通知書を交付した。1年後に会社はこの労働者に1年契約での更新を提示したが、労働者は正社員登用されないのは不当と主張

→会社は、正社員として採用する者に対しても、原則として最初の1年間は契約社員とし、この期間が経過した時点で適任と認められた者に限り、正社員として雇用するという採用方法をとっていた。そして、内定通知の面談の際、人事局長は、この労働者に対し、雇用契約における1年間の期間の定めは試用期間を設けるもので、1年後には正社員となると説明した。労働者はこれを踏まえて内定を受諾している。これらの事情からすると、本件雇用契約における1年間の期間の定めについては、契約の存続期間ではなく、試用期間であると解するのが相当。よって、採用時に1年間を試用期間とする無期の労働契約が成立していると判断。

労働判例ジャーナル156号

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