福岡地裁R7.3.27
運転手らは、運搬物品が消防法上の危険物に該当する化学薬品であることや、サービスエリアの駐車場が混雑していて大型の運行車両を高速道路の路肩やコンビニエンスストアの駐車場等に停めざるを得ないことから、長時間の駐車中も常に周辺環境に気を配り、運行車両及び運搬物品を監視することを義務付けられており、労働から解放されておらず、労働時間にあたると主張
→運搬物品が貯蔵されている運行車両のタンクの吐出口の蓋は専用工具を用いて開閉する構造になっていると認められるところ、運搬物品が消防法上の危険物に該当する場合、運転手らには、運行車両を安全な場所に駐車した上で適切に施錠し、出発前に吐出口の蓋や消火器等の点検を行うなど保安の確保に細心の注意を払うことが求められると解される。しかし、これを超えて、運行車両及び運搬物品を常時監視することまで義務付けられていると解することはできない。
また、運転手らは、高速道路の路肩に駐車する場合には必要に応じて速やかに車両を移動させられるよう車内で待機し、コンビニエンスストアの駐車場等で車両周辺に人がいる場合には常にその動きを気にかけていたとも述べるところ、確かに、実態として、サービスエリア等の混雑のために駐車場所の確保が難しく、運転手らにおいて、周辺の状況に気を配りながら、高速道路の路肩やコンビニエンスストアの駐車場等に運行車両を駐車せざるを得ない事態が生じていたことはうかがわれる。もっとも、運転手らは、長時間駐車中の運行車両の常時監視までもが義務付けられていたとは認められない。運転手らにおいて、長時間駐車中の周辺環境の変化に応じ、運行車両を移動させたり、車両周辺の安全を確認したりしていたとは考えられるが、第三者に声をかける等の対応まで求められることはごく稀であったとうかがわれることに照らしても、これをもって、長時間駐車中に運行車両を常時監視することが義務付けられていたとまで評価することはできない。長時間駐車中、運転手らには労働からの解放が保障されており、労働時間には当たらないと判断