判例・裁判例コラム

パワハラ加害者による調査協力拒否、調査妨害を理由とする普通解雇の有効性

🚨上司がパワハラ調査を拒否し、職員に直接圧力。普通解雇は有効?東京地裁の結論

東京地裁R7.2.7

老人ホームの施設長について、職員約15名がハラスメント被害を会社に訴えた。会社は外部弁護士4名で調査委員会を設置。しかし、施設長は、調査委員会からのヒアリングを2回にわたり拒否。その後会社によるヒアリング出席命令を受けてようやく調査に出席したが、独自に弁護士を伴い、職員らに接触し、聴き取りを行って、職員らのうち8名に供述書を作成させた。なお、この弁護士による職員からの聴き取りの際、施設長は席を外していた。
→ハラスメント被害を申告した職員に、加害者と認識されている施設長が、調査委員会を通さずに直接接触することによって畏怖させ、施設長の不利益になる供述を維持した場合、施設長から法的措置がされる可能性も考慮せざるを得ない状況に陥らせ、強い不安を感じさせるものであったといえる。施設長の行為は、全体として、調査委員会による調査への協力を拒んだ上、調査委員会によるヒアリング調査に協力した職員に精神的圧力を加え、調査を妨害したものと評価せざるを得ない。調査協力指示に違反したというべきであり、就業規則の懲戒事由である「業務上の指示、命令に従わなかったとき」に該当する。他にも業務命令違反、報告書提出命令違反があり、これも懲戒事由にあたる。普通解雇を有効と判断

職務等級制度における給与減額・配置転換の限界前のページ

被害者名黒塗りの報告書ではパワハラ加害者を懲戒できない!東京地裁の判断次のページ

ピックアップ記事

  1. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  2. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  3. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  4. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  5. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    解雇事由調査のための休職命令と賃金支払義務

    東京地裁R3.5.28会社が解雇理由の調査のために従業員に休…

  2. 判例・裁判例コラム

    労災認定されて休業中の従業員の解雇

    大阪地裁R6.11.29広告宣伝等を事業とする会社の…

  3. 判例・裁判例コラム

    自宅待機状態を続けさせたことが違法な退職勧奨であるとされた事例

    東京地裁R6.4.24嫌いな人物はとことん追い詰める、高圧的な態度で…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    就業規則による民法536条2項の適用排除が認められた例
  2. 判例・裁判例コラム

    被害者名黒塗りの報告書ではパワハラ加害者を懲戒できない!東京地裁の判断
  3. 判例・裁判例コラム

    試し勤務の提示を拒否した従業員の復職可否判断
  4. 判例・裁判例コラム

    ストーカー被害の申告を延々と繰り返す事務職員に対する懲戒処分
  5. 判例・裁判例コラム

    住民票記載事項証明書の不提出を理由とする解雇の有効性
PAGE TOP