判例・裁判例コラム

育休復帰当日に営業職を内勤へ配置転換、月5万円超の外勤手当も不支給!配転命令を無効とした東京地裁判決

東京地裁R8.2.18
リフォーム会社で営業職として勤務していた男性が3か月の育児休業を取得。
会社は育児休業からの復帰当日に、営業職から内勤職に配置転換し、外勤手当の支給も停止した。
その3か月弱後に、会社はこの男性について、再度、営業職に配置転換命令。
→内勤職への配転命令は、育児休業から復帰したタイミングで行われ、かつ、外勤手当の不支給という効果を伴うものであるところ、育児休業等を理由とした不利益な取扱いを禁じた育児介護休業法10条の趣旨や、会社においては育児休業からの復帰時の職場及び職務を原則として休業直前のものとする旨定めていることに照らせば、配転命令の業務上の必要性が労働者の不利益を相当程度上回るものである必要がある。
この点、本件の内勤職への配転命令について、会社は、男性の育児休業期間が延びる可能性があったこと、年度末に向けた繁忙期に担当者の変更を避けることによって連絡ミスや発注ミスを防ぐことなどを考慮して行ったと認めるのが相当である。この配転命令が業務上の必要性がないとはいえないし、その目的が不当であるともいえない。
もっとも、男性を営業職として復帰させることによって、連絡や発注に係るミスが生じる具体的なおそれがあるとは認められず、業務上の必要性としてはやや抽象的。育児休業期間が延びる可能性があるという点も、一般的な可能性をいうものにすぎない。予定どおりの時期に復帰することを前提に、復帰後の職務を検討することについて支障があったとはうかがわれない。
そうすると、会社がした内勤職への配転命令の業務上の必要性は、外勤手当(月5万3220円)の不支給という男性の不利益を正当化するに足りるとはいい難い。
その後会社は、再度営業職への配置転換を行っており、内勤職への配転の期間は3か月弱であったことや、内勤職への配置転換が勤務地の変更を伴わないものだったことを考慮しても、内勤職への配転命令は、労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものである。
内勤職への配転命令は、配転命令権限を濫用したものとして無効であると判断

配置転換のルールについては以下の記事でも解説していますので併せてご参照ください。
https://kigyobengo.com/media/useful/3300.html

企業側から見たポイント
このような配転命令は、企業側に悪意がなくても、育児休業取得を理由とする不利益取扱いと評価される危険があり、十分注意が必要です。
一方で、企業の事情とのバランスも必要です。
本件では、
①3か月弱の間、休職前の職務とは違う職務に配置した➁その間外勤手当を支給しなかった
という2つの問題がありました。
西川としては、他の裁判例も踏まえると、①だけであれば違法とはされなかったと考えます。➁について調整手当を支給するなどして経済的不利益を生じさせないようにすべきでした。
なお、厚労省が公表するの育児介護休業の規定例の詳細版では、「育児・介護休業後の勤務は、原則として、休業直前の部署及び職務とする。」「本人の希望がある場合及び組織の変更等やむを得ない事情がある場合には、部署及び職務の変更を行うことがある。」などとなっています。しかし、これは、裁判例のルールに照らしても厳しすぎると感じています。企業側の事情も踏まえた適切な規定を整備する必要があります。
もう満席になってしまいましたが、9月からの研修(https://x.com/kigyohoumu_net/status/2084829629165257120)では、この点の具体的対応方法についても取り上げる予定です。

病気を理由に正社員をパートに変更!給与41万円→7万円に減額…裁判所の判断は?前のページ

カスハラに過剰な反撃をする従業員。指導しても改善なし。 解雇事由になるのか?次のページ

ピックアップ記事

  1. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  2. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  3. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  4. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  5. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    人事考課のフィードバックがないのに7年連続で降級・減給! 東京地裁が無効判断!

    東京地裁R2.2.26会社が、就業規則で、「人事考課による職務等級の…

  2. 判例・裁判例コラム

    公益通報の9か月後にされた配転命令は適法か?

    宇都宮地裁R6.1.12公益通報後の配置転換の違法性従業員数約200…

  3. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6.5.15)
  4. 判例・裁判例コラム

    ハラスメント調査に求められる中立性・公平性について判示した裁判例

    東京地裁R1.11.7大声での執拗な叱責等がパワハラにあたるとして訓…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    早出残業の残業代請求が認められた事例
  2. 判例・裁判例コラム

    「試用期間」を1か月ごとの有期契約にして雇止めすれば、解雇予告手当は不要? 裁判…
  3. 判例・裁判例コラム

    カツオの荷抜き行為が発覚した売場係長に対する退職金不支給
  4. 判例・裁判例コラム

    休職者が産業医の面談は圧迫面接だと主張した事案
  5. 判例・裁判例コラム

    主治医は復職可能・指定医は回復は一時的で復職不可と診断した場合の復職可否判断事例…
PAGE TOP