判例・裁判例コラム

賃金減額について定める給与規程の不備

東京地裁R5.1.11

不動産会社が、給与規程において「同一等級内での昇給・降給は、本人の職務遂行能力の発揮度、業績、勤務態度等を考慮して所定の手続きを経て行う」と定め、給与規程別紙の「等級体系及び等級定義」と題する書面において等級体系と等級定義を明示した。3等級の従業員について、C評価となったことを通知し、賃金を減額した
→賃金減額を労働者の同意を得ることなく実施する場合、その法的根拠が就業規則にあるというためには、当該就業規則において、減額の事由、方法及び減額の幅等について、具体的かつ明確な基準が定められていることが必要である。上記の給与規程はこれらの点が定められておらず、賃金減額の根拠とはなり得ない。よって賃金減額は無効と判断。

試用期間中に2回の事故を起こし、ミスも改善されない従業員を実働10日で解雇した事案前のページ

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