判例・裁判例コラム

在宅勤務の権利を主張し、出社指示に従わない従業員の解雇

東京地裁R7.1.15
ソフトウェアに関する技術指導などを事業とする会社がコロナ禍でマネージャーを採用。このマネージャーは、勤務開始の約1週間後に、義母の介護をしているためコロナ感染が心配だとして、「コロナ下での勤務体制を変更することは可能でしょうか?恐らく週に1度か2度、オフィスに行くことを想定しています。」と上司にメール送信。上司は少なくとも週2日は出社するよう指示した。しかし、入社の翌月は全く出社せず、その他の月もほとんど出社しなかったため、会社は解雇した。
→採用通知書には、就業場所として会社本店所在地が記載され、これに先立つ採用面接や就労開始までの期間において出社義務がないことについて何らのやり取りもなされていない。従業員自身、勤務開始の約1週間後に上司に週に1、2度出社する内容で勤務体制を「変更」することが可能か打診しており、出社義務を負っていることを前提とした行動をとっている。したがって、従業員は雇用契約の内容として出社義務を負っていたと認められる。そして、出社義務の不履行についてメールや書面などを通じ、複数回にわたり改善が求められていたにもかかわらず改善しなかったことなどを踏まえればその程度は著しい。即戦力として採用されたものであり、基本給として年間約1400万円との待遇も受けていたことを踏まえれば解雇は有効と判断。

労災認定されて休業中の従業員の解雇前のページ

年下の女性上司に不満をあらわにし、大声を出して机を叩くなどといった威圧的な態度を示す男性職員の解雇次のページ

ピックアップ記事

  1. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  2. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  3. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  4. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  5. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    ジョブ型雇用における能力不足解雇

    東京地裁R4.2.2欧州連合が日本で広報担当者を雇用したが、上司から…

  2. 判例・裁判例コラム

    ハラスメント調査への不服を経営陣らに送り続ける社員の解雇

    東京地裁R6.6.27 従業員が人事部に対してハラスメントの被害を申…

  3. 判例・裁判例コラム

    注意指導を受けている最中に、その様子を無断録画した職員の解雇

    東京地裁R6.10.24学校法人が社会科の教員を解雇。①校内で入試の…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    有期雇用の従業員との退職合意
  2. 判例・裁判例コラム

    犯罪を犯したとして起訴され、起訴休職期間満了で解雇された職員が、不当な起訴であり…
  3. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.5.15)

    判例・裁判例コラム

    クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  4. 判例・裁判例コラム

    覚醒剤使用で懲戒解雇された従業員の退職金不支給についての判断事例
  5. 判例・裁判例コラム

    教頭を侮辱的な言葉で非難する教員に対する懲戒処分
PAGE TOP