判例・裁判例コラム

鳥取地裁R6.2.16

何度も無理矢理キスをする等の犯罪レベルのセクハラをした部長を懲戒解雇せず降格にとどめた。被害者は、懲戒解雇しなかったことは会社の職場環境調整義務違反と主張
→従業員にいかなる懲戒処分をするかは会社の自主的判断に委ねられるべき事柄。会社の債務不履行とは言えないと判断

間違いなく懲戒解雇相当の事案ですが、会社は懲戒解雇しませんでした。部長は民事裁判の途中に退職しています。
ハラスメントについて、被害者は使用者に対して何を請求できるのか?という観点から参考になる裁判例としてとりあげました。 被害者が法的に請求できるのは、①安全配慮義務違反あるいは使用者責任に基づく損害賠償請求と、②加害者との分離を求める配置転換です。②については、本来は使用者の人事権の問題ですが、ハラスメントの程度にもよっては使用者がこれに応じない場合に安全配慮義務違反となり、損害賠償請求を根拠づけることになります。
これに対して、③加害者に対する懲戒を被害者が請求することはできません。重い懲戒や解雇を望む被害者も少なくないですが、それを会社がしなかったからといって、被害者が会社に何か請求できるわけではないというのが理屈です。
上記の裁判例もこの点を判示しています。
なお、この事案は刑事事件にもなり、部長は、懲役1年6月執行猶予3年の有罪判決を受けています。

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