東京地裁R7.6.26
会社が取締役経験のある従業員を他社に3年間出向させた後、さらに約3年出向を延長。これについて、従業員は、出向先で勤務する義務のないことの確認を求めて訴訟を提起
→会社は、一般従業員の本給上限額を年額750万円とする会社の賃金制度の運用の下では、この従業員の年額900万円の賃金水準を維持して一般従業員として雇用するのは不可能であるとして、出向には雇用機会の確保を目的とした業務上の必要性があると主張する。しかし、会社の主張を前提としても、一般従業員の本給上限額を年額750万円とするのはあくまで運用であって、内部規程等によって厳格に定められたものではない。また、会社においては750万円を上回る賃金水準の一般従業員が少なくとも47名いた。出向の延長を肯定し得るほどの業務上の必要性があったとは認められない。
そして、従業員は入社以来26年間にわたって営業業務に従事し、取締役や関連会社の代表取締役を務めてきたが、出向後は、データ入力等の単純な事務作業等の業務に従事していた。これらの業務は、長年の勤務による知識、経験、能力を発揮できるものとはいい難い。会社は、上記の状況を把握しないまま、更に3年以上の出向延長を命じたものであって、従業員の被る不利益は大きい。また、定年退職日まで出向が延長されており、過去のセクハラ発言などの言動に反省を示さない従業員に支社長クラスを任せることはできない旨の会社の主張などに照らすと、出向の延長は、過去の言動を理由に職場から放逐する帰結になるものであって、不利益性は大きい。そして、「給与改定(原則として毎年4月、出向先の評価を踏まえて改定)」と出向先での人事評価の実施を前提とする記載があるにもかかわらず、当初3年間の出向期間において、面談や人事評価はされず、出向の延長に当たっても、出向先での働きぶりなどを基に賃金水準に関して検討が行われたことは認められない。そうであれば、900万円の賃金水準が維持されていることは、単に、当初の3年間の出向期間に関する評価等がされないままに放置された結果にすぎず、不利益がないことの根拠付とはならない。出向延長命令は、延長を肯定し得るほどの業務上の必要性があるとは認められず、選定対象者の検討もされないままに、従業員を出向先に放逐して会社への復帰の途を閉ざす大きな不利益があるにもかかわらず、説明など適切な手続も履践されずに行われたものであるから、その権利を濫用したものとして違法であると判断
裁判所は出向延長命令は年俸を維持していたとしても違法であると判断しました。
この事案では、出向者の過去のセクハラ発言を会社が問題視しており、定年まで出向させることで自社に戻したくないという会社の意向があったことがうかがえます。
しかし、そのような出向延長は業務上の必要性がとぼしく、年収が維持されても、①キャリアを活かせない業務、②出向元への復帰の道を閉ざすという点で不利益性大きく、③説明など適切な手続もとっていないとして違法と判断されました。
出向命令の可否について相談いただく場面も多いですが、そのような場面で参考になる事案だと思います。







