判例・裁判例コラム

定年後再雇用の2年目に1年目よりも大幅に切り下げた労働条件での雇用を提示した事案

東京地裁R6.4.25
60歳で定年退職した従業員を1年間有期雇用した後、2年目の有期雇用にあたり大きく切り下げた労働条件を提示。従業員は雇い止め法理の適用により、2年目も1年目と同じ条件で労働契約が成立すると主張した。
→雇い止め法理を定める労働契約法19条2号は「有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由」があることを要件としている。ここにいう更新の期待とは、直近の労働条件と同じ条件で契約することの期待をいう。本件では、①まだ更新されたことがなかったこと、②会社の再雇用について定めた継続雇用規程において定年後再雇用者の労働契約は期間1年とされ、労働条件については個別に会社が契約の都度決定すると定められていること、③会社が3年連続赤字であり、親会社に吸収合併され、労働条件の切り下げが客観的に避けがたい状況であったこと等を踏まえれば、2年目の契約が1年目と同じ労働条件でされることについての期待に合理的理由はない。2年目の契約について合意に達しなかったことにより、雇用契約は終了したと判断

232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大阪地裁R6.3.27)232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大阪地裁R6.3.27)前のページ

上司の腹部をつついてちょっかいを出すなどしていた女性部下が、その上司によるセクハラ被害を訴えた事案次のページ

ピックアップ記事

  1. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  2. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  3. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  4. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  5. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    メンタル休職から復職して21か月後の秋田への転勤命令

    東京地裁R5.12.14保険業を行う一般財団法人が、適応障害…

  2. 判例・裁判例コラム

    休職者が産業医の面談は圧迫面接だと主張した事案

    名古屋地裁R3.8.23うつ病による休職からの復職後、再度休…

  3. 判例・裁判例コラム

    就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?

    東京地裁R5.12.14給与規程において、「業務内容の変更に伴い、そ…

  4. 判例・裁判例コラム

    職種限定合意がある従業員に対する配転命令

    最高裁R6.4.26社会福祉法人が福祉用具の改造・製作を行う技術者を…

  5. 判例・裁判例コラム

    日報を提出しない従業員に対するけん責処分

    東京地裁R6.5.30営業所長の再三の提出指示にもかかわらず、営業日…

  6. 判例・裁判例コラム

    製造業で年収800万円の部長の管理監督者性

    大阪地裁R3.3.12取締役会に出席して経営方針の決定に参画…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    パワハラ加害者による調査協力拒否、調査妨害を理由とする懲戒解雇の有効性
  2. 判例・裁判例コラム

    教頭を侮辱的な言葉で非難する教員に対する懲戒処分
  3. 判例・裁判例コラム

    過半数代表選出において無投票者は有効投票による決定に委ねたものとみなすと定めた場…
  4. 判例・裁判例コラム

    公益通報の9か月後にされた配転命令は適法か?
  5. 判例・裁判例コラム

    運送業者におけるルート別単価による賃金支払は出来高払制にあたる?
PAGE TOP