東京地裁R6.1.25
100店舗を超えるドラッグストアを経営する会社が20年以上継続勤務していた店長を懲戒解雇。会社では期間を決めて重点販売商品の販売を競う販売コンクールが定期的に行われ、上位店舗に報奨金が支給されていたところ、店長は合計9回にわたり、自分で重点販売商品を購入してコンクール期間終了後にこれを返品する行為を行っていた。また、その返品の際に購入時に付与されたポイントを消滅させる処理をせず、さらに社割で購入したにもかかわらず通常価格での返金処理をしたことにより4201円を不正に取得していた。
→店長の行為はコンクールの実施目的に反するものであって、店長自らがコンクールの対象商品を購入することやそれを返品すること自体は禁じられていなかったことを考慮しても、コンクールの目標を達成するように意図的に売上げを操作する行為である。また、4201円の取得については、店長が不正に利益を得ることを意図して行ったとまでは認められないものの、重大な過失がある。会社は、従来から、従業員による商品、金銭に関する不正を防ぐために、不正の金額の多寡を問わず極めて厳しい方針を取っていた。また、コンクールの不正行為により過去にも従業員が懲戒解雇され、全店舗に告示されており、店長もそれを認識していた。他の従業員を指導する立場である店長の職にあったことを踏まえれば、20年以上勤務して他に問題がなかったことを考慮しても、店長の行為は、商品、金銭、ポイントの管理を一定程度、現場従業員に委ねることを前提として成り立っている小売業者において従業員に対する信用を著しく失わせるものといわざるを得ない。懲戒解雇は有効と判断