大阪地裁R1.12.10
派遣会社が、エンジニアを派遣社員として月給52万円で無期雇用し、派遣先(A社)に派遣。その後、この派遣社員と派遣先(A社)の間でトラブルがあり、派遣会社は派遣先(A社)から派遣契約を終了された。しかし、他の派遣先も見つからなかったため、派遣会社はこの従業員に自社内での勤務を指示し、その際の労働条件を月給38万円と説明した。これに対し、従業員は従前の賃金額を支払うことを求めて勤務に応じず、欠勤を続けた。会社は従業員に対し、会社が提示した給与が受け入れられないのであれば従業員から法的手段をとることも可能であること、給与水準に不満があるからといって出勤の命令に従わないのは従業員として不適切な行動であることを説明し、改めて出勤を促したが、従業員は連絡なく欠勤を続けた。そこで、会社は、出勤しない場合は懲戒処分の対象となる旨を内容証明郵便で通知したが、従業員がこれにも応答せずに欠勤を続けたため、この従業員を懲戒解雇。従業員は会社に対して訴訟を提起し、賃金を減額する労働条件の変更は無効であり、これを前提にした出勤命令も無効だから、懲戒解雇も無効であると主張した。
→月額52万円の賃金額は、A社への派遣を前提とする額であったと認められ、派遣契約終了後に会社が会社の指示する新たな業務に見合う対価への改訂を求めたことには相応の合理性がある。月額38万円の提示をしていることをもって出勤指示が違法なものとはいえず、従業員が就業しないことが正当化されることにはならない。会社は4度にわたり出勤を求めていること、従業員が賃金額に異議をとどめて就業しつつ賃金額を争うことも可能であったのに正当な理由なく約1か月間就業しなかったことなどを踏まえれば懲戒解雇は有効と判断