判例・裁判例コラム

小規模企業の整理解雇では役員報酬の削減が必要?

東京地裁R6.1.30
製造業者が新たに訪問介護事業を開始したが、訪問介護部門の従業員の同時退職やそれに伴う利用者離れで営業損失を出し、訪問介護部門全員の整理解雇を行った
→整理解雇の有効性判断にあたっては、人員削減の必要性、解雇回避努力、人選の合理性及び解雇手続の相当性の存否及びその程度を総合考慮すべき。この点、看護師の退職により訪問看護事業における看護師の人員基準を満たすことができず、将来的な事業立て直しの展望も見通せない状況であったから人員削減の必要性は高い。また、訪問看護部門の従業員全員を整理解雇しているから人選の合理性も認められる。
しかし、解雇回避努力については、小規模会社で配置転換により解雇を回避する余地が乏しいとしても、役員報酬が2年連続約700万円計上されており削減された形跡がないことや、訪問介護部門の従業員に賃金減額を提案したこともないことからすれば、解雇回避努力は不十分。また、解雇手続の相当性についても、解雇の8日前まで解雇の可能性の説明や再就職支援、退職勧奨等を一切行っておらず、解雇によって打撃を被る従業員のことを全く考慮しない不意打ち的な解雇であった。これらの点を考慮すれば、人員削減の合理性が高く、人選の合理性も認められることを踏まえても、解雇は無効と判断

会社の要請に反する行動を理由とする降格前のページ

役職手当を固定残業代と定める規定の有効性次のページ

ピックアップ記事

  1. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  2. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  3. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  4. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  5. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    総合職にのみ社宅利用を認め、一般職には認めないことは間接性差別?

    東京地裁R6.5.13会社は、住居の移転を伴う転勤に応じることができ…

  2. 判例・裁判例コラム

    休職について説明したにすぎず休職を命じていないとされた事例

    大阪地裁H25.1.18バス会社の従業員が通勤中の交通事故で…

  3. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)

    判例・裁判例コラム

    業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)

    事件の概要従業員が、会議への参加や業務の引き継ぎ等の業務命令…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    同一労働同一賃金ルール違反を是正する際の経過措置が同一労働同一賃金ルール違反であ…
  2. 判例・裁判例コラム

    初めて就業規則を作ったら“労働条件の不利益変更”!? 7時間半→8時間で会社が負…
  3. 判例・裁判例コラム

    労働契約法10条但書にいう「労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されな…
  4. 判例・裁判例コラム

    就業規則に休職期間の延長規定を設けた場合の効力
  5. 判例・裁判例コラム

    日常的な強い叱責がパワハラにはあたらないが安全配慮義務違反ありとされた事例
PAGE TOP