判例・裁判例コラム

会社がずさんな秘密保持誓約書の提出を求めたことが会社の請求を認めない理由の1つとして判示された事例

大阪地裁R5.4.17
会社が退職者に営業秘密を持ち出されたと主張して不正競争防止法に基づく損害賠償請求。従業員は問題の情報は秘密として管理されていなかったと主張。
→ファイルや書面に営業秘密である旨の表示がされていなかったこと、社外からのアクセスは制限されているが社内の全従業員がアクセス可能であったこと、営業秘密であることの注意喚起や研修等を行っていなかったことなどから、営業秘密として管理されていなかったと判断。
さらに、会社が退職時に退職者に秘密保持に関する誓約書の提出を求めたことについて、「商品、サービス、財務、人事等に関する広範な情報を秘密情報とし、理由の如何を問わず、自己又は第三者のために開示、使用することを無期限に禁じ、退職後2年間もの間、競合企業への就職等を一切禁止する内容」であり、「仮に合意されたとしても明らかに公序良俗に反し無効なものであり、退職者がこれを拒否するのは当然」としたうえで、このような誓約書の要求は、「むしろ、会社において適切に営業秘密として管理していなかったことを窺わせる事情といえる」旨判示。会社の請求認めず。

☆秘密保持に関する誓約書の作成の際は対象となる秘密情報を特定することが重要です。上記裁判例の事案ではこれができておらず、安易に広範な情報を秘密情報として記載していたため、誓約書の提出を求めたことがむしろ逆効果となりました。秘密保持誓約書の作成例や作成方法は「労使トラブル円満解決のための就業規則・関連書式作成ハンドブック」でも書式29として詳細に解説しています。

https://www.amazon.co.jp/dp/4539729977?tag=hatena-22&linkCode=osi&th=1&psc=1

パソコンの共有フォルダに保存した就業規則の効力前のページ

退職後6か月間、半径2キロ以内での独立開業を禁止する競業避止規定の効力次のページ

ピックアップ記事

  1. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  2. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  3. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  4. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  5. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    35年以上続いた定期昇給を中止できる?

    東京地裁R5.10.30学校法人が35年以上行なってきた4月の定期昇…

  2. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.5.15)
  3. 判例・裁判例コラム

    営業担当者の採用失敗の手痛い失敗事例!東京地裁の結論!

    東京地裁R7.6.13法人が超富裕層向けの営業担当者を採用するために…

  4. 判例・裁判例コラム

    私傷病休職の期間を会社の判断で延長できる?

    大阪高裁H25.1.18 会社は、休職期間の延長は労働者に有利だから…

  5. 判例・裁判例コラム

    送別会帰りのタクシーでのセクハラについて会社は使用者責任を負う?

    東京地裁R5.5.29上司の送別会の帰りのタクシーで上司が部下の女性…

  6. 判例・裁判例コラム

    どのくらいの時間数の副業なら本業に支障を生じさせると認められる?

    東京地裁R3.7.8集団住宅の管理員として有期雇用されていた…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    適応障害による休職者の復職可否判断
  2. 判例・裁判例コラム

    就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?
  3. 判例・裁判例コラム

    東京地裁R3.2.15
  4. 判例・裁判例コラム

    社内で上司に対する暴行事件!懲戒処分は刑事処分の結果を待つべきか?最高裁の結論
  5. 判例・裁判例コラム

    第三者名義の口座への給与の支払い
PAGE TOP