判例・裁判例コラム

労災認定されて休業中の従業員の解雇

大阪地裁R6.11.29

広告宣伝等を事業とする会社の従業員がうつ病を発症。長時間労働が原因だとして労災請求して労災認定された。会社は休業開始の約3年9か月後にこの従業員を解雇。従業員は解雇された当時、労災からの休業補償給付を受給中だった。従業員は解雇は労基法19条1項に違反すると主張して訴訟提起
→労基法19条1項は業務上の傷病のための休業期間とその後30日間の解雇を禁止するが、業務起因であっても、症状固定後はこの解雇禁止は適用されない。従業員の通院頻度は、おおむね月1回又は2回と一定しており、治療薬であるアナフラニールの処方量についても3年以上1日50mgと一定していた。また、主治医が労基署長に定期的に提出した診断書によれば、日常生活の状況も一定しており、「今後6ヶ月以内における上記症状の変化の見込みの有無」の欄の記載も解雇の約1年前に「有」から「無」に変更されている。これらを踏まえれば、従業員のうつ病は症状固定に至っていた。そして、厚労省の通達によれば、業務による心理的負荷を原因とする非器質性精神障害については、業務による心理的負荷を取り除き、適切な治療を行えば、長くても2~3年の治療により完治するのが一般的であるという知見が示されている。本件解雇は症状固定日から30日以上経過した後にされたものであり、労基法19条1項に違反するものではない。就業規則の「精神または身体に故障があるか、または虚弱、傷病、その他の理由により職務に堪えられない」の解雇事由にあたり、解雇有効と判断

定年前の業務命令違反について定年後に懲戒処分できる?前のページ

ピックアップ記事

  1. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  2. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  3. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  4. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  5. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    通勤中に立ち寄ったコンビニで転倒して負傷した場合の労災請求

    東京地裁R6.6.27出勤途中で立ち寄ったコンビニ内で転倒し、腰椎捻…

  2. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)

    判例・裁判例コラム

    就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)

    事件の概要給与規程において、「業務内容の変更に伴い、その業務…

  3. 判例・裁判例コラム

    職場内の人間関係を理由に休職者の復職を認めないことは可能?

    大阪高裁H27.2.26双極性障害による休職からの復職を認められなか…

  4. 判例・裁判例コラム

    小規模企業の整理解雇では役員報酬の削減が必要?

    東京地裁R6.1.30製造業者が新たに訪問介護事業を開始したが、訪問…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    解雇された従業員からの「指導が不十分であった」という主張を認めなかった事例
  2. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大阪地裁R6.3.27)

    判例・裁判例コラム

    232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  3. 判例・裁判例コラム

    労災認定されたが損害賠償責任は否定された事例
  4. 判例・裁判例コラム

    役員としての重大な不正を理由に従業員としての退職金を不支給にできる?
  5. 判例・裁判例コラム

    不備のある定額残業代を就業規則変更によって有効にできる?
PAGE TOP