東京高裁H30.1.25
介護事業者が、前職で25年の勤務歴がある男性介護職員を採用。
しかし、認知症重症度の高い施設利用者の多い部署に異動した後、利用者に対する配慮よりも自己の負担軽減を優先するようになった。これについて年下の女性上司から指導を受けたことなどから次第にこの上司に対する反感を強めた。上司の業務上の指示命令に従おうとせず、不満をあらわにし、利用者の前でもしばしば大声を出し、机を叩くなどといった威圧的な態度を示すようになった。女性上司はノイローゼ気味になり、この男性職員と同じ職場で働くことはできないと訴えるようになったことなどから、法人はこの男性職員に退職勧奨を行った。しかし、応じなかっため、普通解雇した。
→男性職員は解雇通知を受けるに先立ち、厳しく注意されたにもかかわらず態度を改めようとはせず、3回にわたり施設長から呼出しを受け、問題点を指摘されても責任を転嫁するなどしており、服務規律違反が改善される見通しがあったとはいえない。しかし、男性職員の服務規律違反は、主として年下の女性上司に対する反感と認知症重症度の高い利用者を介護対象とする労働環境に起因すると認められる。認知症重症度の高い施設利用者の多い部署に異動する前はさしたる問題行動は見られなかったことを踏まえれば、法人は、この男性職員を他の部署に配置転換し、他の上司の下で稼働させることを検討すべきであった。解雇回避努力が尽くされたとはいえないから解雇無効と判断。男性職員が法人との間で労働契約上の権利を有する地位にあることを確認し、法人に対し650万円超の支払い命令