神戸地裁R7.9.19
営業部長兼営業担当取締役が退職直前の3日間にメール約180通を削除して退職。その後、同種事業の会社を設立した。会社は、退職者が会社に対する業務妨害を図り、営業秘密を社外に持ち出した疑いがあると考え、外部業者によるデジタル・フォレンジック調査を実施。そのうえで、メールの削除行為は不法行為であるとして退職者に損害賠償請求した。これに対し、退職者は、メールの保存ないし削除はそのメールを送受信した個人の裁量に委ねられていたなどと反論した。
→取引先との発注書や見積書等の資料のみでは、そのような発注ないし見積もりになった経緯を理解することができず、メール内容を検討することは必要であるし、すでに取引関係が終了した取引先とのメールであっても、将来的な取引再開の可能性や過去の取引に関するクレーム等があった場合の対応の必要性があり、当然に不要になるものではない。メールは、退職者個人の私信ではなく、会社に帰属すべき情報財産であり、社内においてメールの削除に関するルールが存在しないのは、個人の裁量による削除が想定されていないからにすぎないというべきである。退職者が退職に先立ち、メールを意図的かつ一斉に削除したことは、会社の財産権を侵害し、会社の業務を妨害するものであり、不法行為に該当する。調査費用相当額及び不法行為と因果関係のある弁護士費用相当額として200万円超の賠償命令