判例・裁判例コラム

定年後再雇用をめぐる退職勧奨の問題事例?東京地裁の結論!

東京地裁R7.5.30
ゴルフ場の運営会社の部長が60歳の定年前に定年退職後の再雇用申請書を提出。嘱託社員として勤務することを希望した。また、定年後再雇用の月額給与を会社に質問。会社は定年時の50%以上と回答した。しかし、会社取締役はその後、部長に対し、再雇用後にこの部長が働く部署は見当たらないと述べ、その後の面談でも退職を勧める方向で話しつつ、2か月間は雇用すると伝え、「出勤は一切しなくていいです」「だからぜひ、就職活動してください」などと話をして、雇用期間2か月、給与は定年前と同じとする雇用契約を締結。労働条件書には契約更新はしないと記載して交付した。2か月の雇用期間満了が近づいた頃に、部長が弁護士に依頼して再雇用拒否は違法・無効であると主張する内容証明を送付。労働契約上の権利を有する地位の確認などを請求する訴訟を提起した
→使用者において定年後再雇用の継続雇用制度が採用されている場合、定年後に再雇用契約を締結した労働者には、退職事由または解雇事由に該当しない限り、定年後再雇用の上限まで契約が更新されると期待する合理的な理由がある。定年後に雇用期間2か月、契約更新はしないと記載した労働条件通知書が作成され、部長は特段の異議を述べていないが、会社を退職する意思で部長がこの契約を締結したとは認められない。会社は、部長についてパワハラ、勤務態度不良、重大な過失事故などの解雇事由があったとも主張するがいずれも認められない。地位確認請求を認容し、約1400万円のバックペイ支払命令。

高年法のパワーが強力です。
2か月の有期契約を1回結んだだけでは、雇い止め法理の適用は通常ありません。本件で、「定年後再雇用の上限まで契約が更新されると期待する合理的な理由がある」とされたのはまさに高年法のパワーです。
有期雇用者に対する退職勧奨では、退職合意の趣旨で、次回更新なしを明記した有期雇用契約書が作成される例があり、本件もそういうふしがあります。しかし、退職合意するなら、退職合意書をつくるべきであり、次回更新なしを明記した有期雇用契約書で対応するやり方はポストのように大きな失敗につながることがあります。

業務時間外の飲酒運転による懲戒解雇。従業員は私生活上の行為であり解雇無効と主張!大阪地裁が出した結論とは?前のページ

従業員が、日時を特定せずに「副主任からいじめを受けている」との抽象的な報告。この場面で会社がとるべき行動とは?裁判所は会社の調査不足を指摘!次のページ

ピックアップ記事

  1. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  2. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  3. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  4. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  5. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    定年前の業務命令違反について定年後に懲戒処分できる?

    東京地裁R7.1.30大学が、大学病院において、定年退職後再…

  2. 判例・裁判例コラム

    退職代行サービスを利用して突如退職を申し出ることは引継ぎ義務違反?

    大阪地裁R7.1.27放課後デイサービスを運営する会社が退職した正社…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    形成外科医のオンコール当番待機時間は労働時間か?
  2. 判例・裁判例コラム

    在宅勤務の権利を主張し、出社指示に従わない従業員の解雇
  3. 判例・裁判例コラム

    出来高払制賃金といえるためには自助努力が反映される賃金であることが必要か?
  4. 判例・裁判例コラム

    始業時刻前の出勤は「自主的」だから残業代を払わなくてもよい?東京高裁の判断!
  5. 判例・裁判例コラム

    売上の5パーセントを割増賃金に充当する雇用契約書の定めは有効?釧路地裁の判断!
PAGE TOP