令和7年11月20日 熊本県労働委員会命令
組合側14名、法人側3名で団体交渉が行われた。団体交渉中に労働組合の執行委員長が、「おい、ちゃんと聞かんかい、こら」「何が怖いの、こら。」「ちゃんと顔見んかい、ちゃんと顔見て話しせんかい。」などと発言した。
これを受けて、法人側で出席していた弁護士が団体交渉の打ち切りを告げた。組合執行委員が「暴言はこちらのほうから謝ります。」と発言したが、法人は団体交渉を打ち切った。
→ これらの発言は不穏当な言動であり、交渉態度として必ずしも是認されるものではない。 しかしながら、労使の交渉において、ある程度厳しい応酬や交渉態度が出現することもやむを得ないと言うべきところ、本件においては、組合と法人側で出席した弁護士の間でかみ合わない議論が続いたことに触発されたという事情も認められる。
そして、これらの不規則発言は、暴力等の行使を示唆するものではなく、実際に有形力の行使は一切行われていないから、法人に強い危険を感じさせ、法人側出席者の安全等を確保できないと認識させるに十分なものとは認め難い。
不規則発言により、団交が継続できない程度の支障が生じていたとは認められない。
法人が執行委員長の不規則発言を理由として団交を終了したことに正当性があるとは認められず、労働組合法7条2号の不当労働行為(正当な理由のない団体交渉の拒否)にあたる。また、法人の行為は、組合の団体交渉権を軽視するものであり、組合員の組合の交渉力に対する不信を醸成し、その弱体化を招くものであるから、組合に対する支配介入であると言わざるを得ず、労働組合法7条3号の不当労働行為にもあたると判断。
不当労働行為については以下で解説していますのであわせてご参照ください。 不当労働行為とは?類型ごとに事例や罰則をわかりやすく解説 – 咲くやこの花法律事務所
https://kigyobengo.com/media/useful/674.html
14対3の団交の場でこのような暴言を吐かれても、「強い危険を感じさせ、法人側出席者の安全等を確保できないと認識させるに十分なものとは認め難い」とした労働委員会の判断は、想像力を欠いているのではないかと感じます。「法人の行為は、組合の団体交渉権を軽視するもの」としていますが、本当にそうでしょうか。結論としても不当と考えます。
ただ、現実として、この種の判断例は以前からあるので、使用者として単に団交を打ち切るという対応は適切な選択ではありませんでした。その場は打ち切ったうえで、次回以降の再開条件として正式な謝罪と再発防止の誓約を求めることで、組合側が対応を改めれば再開することを明確にしておくべきでした。
なお、弊所では、企業側の立場で団体交渉への同席をご依頼いただくこともありますが、外部の労働組合であっても、団体交渉の場でこのような暴言を吐く例はごく少数になっていると感じます。一般論としては、変に身構えたり、嫌悪したりするのではなく、話し合うことが大切だと感じます。





