判例・裁判例コラム

東京地裁H28.10.7

 裁量労働制適用者は前日までに会社に始業・終業時刻を届け出るべきこと、標準時間帯内で30分は出勤すべきことを定めた
→会社が届け出た始業時刻の遵守を指導することを超えて、会社が届け出るべき始業時刻を具体的に指示したり、1日30分を超える就業を指示する権限はないと判示。

 裁量労働制は、たとえ30分でも出勤すれば、使用者は欠勤扱いできず、そのような働き方について賃金控除も懲戒も指導もできないという大きな裁量を労働者に認めています。 嫌な上司がいれば、その上司と在社時間をずらすことも当然できます。
 しかし、それでは業務に支障が生じることもあるので、裁量労働制を導入する際は、そのような裁量を認めることによる支障も必ず検討すべきです。単に、時間外労働の割増賃金を払わなくてよいという制度ではありません。
 ポストの裁判例の事案で、当事者となった従業員は、会社が銀行から委託を受けた業務について、銀行本社に常駐して対応することを要する業務を担当していました。会社は訴訟においてこの従業員の就業状況を問題視する主張を行いましたが、裁判所は、裁量労働制を採用している以上、「常駐業務」の担当者であっても、1日30分を超えて職場等に滞留すべきことを指示する権限はない、「裁量労働制を定める労働契約を締結したのは被告自身であるから,何ら正当化事由にならない。」と判示しています。

 労働者も権利の行使に当たっては、それを濫用することは許されません(労働契約法3条5項)。裁量労働制の見直しについて報道がされていますが、個人的には、裁量労働制における裁量権の行使も、労働契約の趣旨に反しない合理的な範囲において認められるものであることを明確にすべきだと考えます。

「要介護者が施設に入ったから介護休業は終了?」 ―東京地裁が会社の“独自判断”を否定。手厚い介護休業規程が“裏目”に出た事案前のページ

東京地裁R4.12.2次のページ

ピックアップ記事

  1. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  2. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  3. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  4. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  5. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…

関連記事

  1. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.5.15)
  2. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大阪地裁R6.3.27)
  3. 判例・裁判例コラム

    業務命令に応じない従業員への対応事例

    東京地裁R5.11.15従業員が、会議への参加や業務の引き継ぎ等の業…

  4. 判例・裁判例コラム

    クリニックに勤務する麻酔科医の呼び出し待機時間は労働時間?

    大阪地裁R7.3.24麻酔科医がクリニックから、就業時間外も、クリニ…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    残業許可制について厳格な運用をしていたと認められた事例
  2. 判例・裁判例コラム

    労働者代表の同意を得て労基署長に届け出たが周知されていない就業規則に基づく懲戒解…
  3. 判例・裁判例コラム

    出向元が出向社員から出向先での仕事に困難が生じたとして相談された場合に取るべき対…
  4. 判例・裁判例コラム

    形成外科医のオンコール当番待機時間は労働時間か?
  5. 判例・裁判例コラム

    他の従業員も宛先に入れた叱責メールの中で「言動に目に余るものを感じております」と…
PAGE TOP