判例・裁判例コラム

「要介護者が施設に入ったから介護休業は終了?」 ―東京地裁が会社の“独自判断”を否定。手厚い介護休業規程が“裏目”に出た事案

東京地裁R7.9.12
 アパレル会社が、介護休業規程で、正社員の介護休業の期間について、対象家族1人につき通算1年間を限度とすると定めた。体調不良・休職・欠勤を繰り返していた男性管理職が、復職の1か月後に父親の介護を理由に介護休業を4か月取得。その後、さらに、約4か月の延長申請を行った。会社はこれを認めたが、その後、父親が介護施設に入所。会社は、男性と面談の上、介護の必要性は解消されたと判断し、今後の介護休業延長申請を認めないと通知した。
→会社の介護休業規程に、介護の必要性がないことをもって申出を拒むことができるとの定めはない。会社は、男性の父親が施設に入所していることを主な理由として介護休業が認められないと通知したが、このような理由によって介護休業を認めないことは規程の定めに反する。
 会社は、育児・介護休業法で認められる介護休業期間である93日を超えるため、これを認めるかどうかは会社の広範な裁量に属すると主張する。しかし、法の定める範囲を超える部分についていかなる制度を設計するかは会社の裁量だとしても、その上で会社が制定した介護休業規程は育児・介護休業法が定める93日間とそれを超える部分との間で取得要件等に差を設けていない。よって、会社の主張は採用できない。会社の対応は、男性の介護休業の取得を違法に妨げる行為であり、不法行為及び職場環境配慮義務違反を構成すると判断

 会社が自分で作った手厚い規程に違反して、違法と評価されたものです。 そもそも、育児・介護休業法における介護とは、介護の体制を整えて仕事との両立の準備をするための期間です。労働者が実際に介助作業を実施するための休業に限定されるものではありません。そのため、要介護者が施設に入所して労働者による介助作業の必要がなくなったとしても、介護休業を労働者の意向によらずに終了することは認められません。
 そして、法律上義務付けられる93日を超える部分についてどういう制度を設計するかは会社の自由ですが、本件で会社が制定した介護休業規程は育児・介護休業法が定める93日間とそれを超える部分との間で取得要件等に差を設けていませんでした。これが会社の措置が違法と判断される原因になりました。
 長期の介護休業も可能とする制度を設けるのであれば、例えば、93日を超える部分については会社の許可を要すると定めるなどしておくべきでした。

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