東京地裁R5.12.15
50代の男性課長が20代女性部下とエレベーターに乗り、女性部下がエレベーターから降りる際に立ち止まったので、女性部下の臀部を手の平で2回たたいた。これについて女性部下がコンプライアンス推進室に通報し、会社は課長にセクハラを理由に懲戒降格処分を行った。課長は、この事件の前から、女性部下とLINEのやりとりがあり、その中で女性部下が「かちょ」と呼んだり、「これからも仲よくしよーねー!」と記載したことがあった、また、女性部下が課長の腹部をつつくなどしてちょっかいを出すことがしばしばあり、課長もこれに応じて女性部下の大腿部を叩くように触っており、そのようなことが10回以上あったという経緯を主張。懲戒降格処分は無効であると主張した。
→確かに本件では、女性部下の側から親密な内容のLINEが投稿されたり、課長の腹部を頻繁に触ることがあった。しかし、課長の立場からすれば、部下に従業員同士の適切なコミュニケーションの取り方を指導すべきところ、そのような指導をすることなく、自分からも繰り返し女性部下の身体を触り、最終的には課長の行為がエスカレートしたと感じた女性部下から抗議を受けるに至ったものであるから、本件懲戒処分の量定を検討するに際し、女性部下と課長とのやり取りや女性部下が課長の腹部を触っていたこと等を重視すべきではない。会社から具体例を示してセクハラ行為に対する注意喚起がされていたこと、課長が過去に別の女性従業員とのセクハラトラブルでけん責処分を受けたことがあったこと、本件の後も課長が自身の行為の問題点を十分に理解して反省しているとはいえないことなどを踏まえれ、懲戒降格処分は有効と判断