判例・裁判例コラム

通勤中の電車内で盗撮行為を行った課長を懲戒解雇した事案

名古屋地裁R6.8.8

課長が通勤中の電車内で口を開いたリュックサックに小型カメラを隠して足元におき、女性のスカート内を盗撮しようとした。これが見つかって逮捕されたが、翌日釈放された。課長は女性に被害弁償し、女性は被害届を取り下げたが、会社は課長を懲戒解雇。

→本件行為は行為時は条例違反にとどまり、その法定刑も重いとはいえない。課長は被害者と示談し、不起訴処分となっており、刑事事件により有罪判決をうけたわけでもない。会社の懲戒規程では、職務外の非違行為は、刑事事件により有罪とされた者については「懲戒解雇~減給」、それ以外の行為により会社の信用・名誉を棄損し、業務に支障をきたした者については基本は「減給~注意」、重大なものは「懲戒解雇~停職」とされている。本件については報道されず、逮捕翌日には釈放されて勤務できる状態になっており、業務等に悪影響を及ぼしたと評価することができる具体的な事実関係があるとはいえない。よって、懲戒解雇は無効と判断。課長が労働契約上の権利を有する地位にあることを確認し、会社にバックペイ約400万円の支払いを命じた。

アルバイトをシフトに入れなかった使用者の責任前のページ

通勤中に立ち寄ったコンビニで転倒して負傷した場合の労災請求次のページ

ピックアップ記事

  1. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  2. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  3. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  4. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  5. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    1年以上服薬せずに日常生活を送っていた休職者の復職可否判断

    名古屋地裁R3.8.23躁うつ病(双極性障害)で休職していた休職者が…

  2. 判例・裁判例コラム

    1000円の着服をした運転手の退職手当1200万円超を全額不支給にした事案

    最高裁R7.4.17京都市交通局に勤務するバス運転手が運賃1000円…

  3. 判例・裁判例コラム

    長時間労働者に早く帰宅するように指導しても帰らない場合に会社がとるべき対応

    大阪地裁H20.5.26長時間労働のシステムエンジニアがうつ状態と診…

  4. 判例・裁判例コラム

    自宅待機中の従業員に対する出社命令

    東京地裁R6.4.24嫌いな人物はとことん追い詰める、高圧的な態度で…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    会社の要請に反する行動を理由とする降格
  2. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.5.15)

    判例・裁判例コラム

    クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  3. 判例・裁判例コラム

    就業時間外の性犯罪による懲戒解雇
  4. 判例・裁判例コラム

    出勤停止の懲戒処分通知書を従業員が返送した場合の効力
  5. 判例・裁判例コラム

    ハラスメント調査に求められる中立性・公平性について判示した裁判例
PAGE TOP