判例・裁判例コラム

会社に1000万円超の損害発生でも身元保証人は“責任なし” 高裁判決は会社の説明不足を指摘!

高松高裁R7.10.31
会社が退職時に故意に会社データを削除した従業員に対して3000万円超の損害賠償請求訴訟を提起。
身元保証人になっていた従業員の母親と妻にも同額を請求した。
身元保証書は、民法改正前の事案のため責任限度額の定めはなく、保証期間は5年とされていた。
→会社は、従業員入社に当たって、従業員に、入社必要書類一式を郵送。その中に身元保証書の用紙があった。従業員は、妻と母に身元保証書への署名押印を依頼し、妻と母は入社時に必要な形式的な書類という程度の認識で、身元保証契約書に署名押印している。
会社は、妻と母に対し、保証意思の確認をせず、極度額の定めがないことや保証期間を5年と定めていることを含め、保証責任の範囲や内容について、説明もしなかった。そもそも、言葉を交わすことすらなく、従業員を通じて身元保証書の提出を受けたにすぎない。
以上の事実によれば、身元保証人らは保証責任の範囲や内容やこれによるリスクを十分に検討しないまま、身元保証契約を締結したものと認められる。
また、その主な原因は、会社が、保証意思の確認をせず、必要な説明を現実にはしなかった点にある。
以上に加え、会社がその事業分野で大きな世界シェアを有する会社であることその他本件にあらわれた一切の事情に照らせば、身元保証法5条による免責を認めるのが相当。
従業員に対する賠償請求のうち約1000万円のみ認め、身元保証人に対する請求認めず。

身元保証書取得時の説明不足などを理由に身元保証人への請求が認められなかった事案です。「会社は身元保証人と言葉を交わすことすらなく、従業員を通じて身元保証書の提出を受けたにすぎない。」という点は、そういう会社も多いのではないかと思われます。
しかし、身元保証書は、本来自身の責任でないことについて身元保証人に責任を負わせるものである以上、身元保証書を取得するのであれば、身元保証人に直接、責任の内容や範囲を説明し、保証意思を確認し、それを記録に残すことが必要です。
本件では、これらの点ができておらず、身元保証法5条を根拠に裁判所は責任を否定しました。
身元保証法5条は「裁判所ハ身元保証人ノ損害賠償ノ責任及其ノ金額ヲ定ムルニ付被用者ノ監督ニ関スル使用者ノ過失ノ有無、身元保証人ガ身元保証ヲ為スニ至リタル事由及之ヲ為スニ当リ用ヰタル注意ノ程度、被用者ノ任務又ハ身上ノ変化其ノ他一切ノ事情ヲ斟酌ス」としています。

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