判例・裁判例コラム

タイミー利用者が他社でのダブルワークを理由に割増賃金を請求!東京地裁の判断

東京地裁R7.3.27

タイミーを利用してレジ打ちのアルバイトをしていた従業員が割増賃金を請求。以前から他に整骨院でも働いており、両勤務先の労働時間を通算すれば1日8時間、週40時間を超えると主張した。
→複数の勤務先の労働時間を通算すれば1日8時間、週40時間を超えるときは、労基法38条1項により後で雇用した雇用主が割増賃金支払義務を負うが、他の事業主の下でも労働し、通算すれば1日8時間、週40時間を超えることをその事業主が知らなかったときは労働時間通算による割増賃金支払義務を負わない。本件で、労働者がレジ打ちのアルバイトをしていた間、事業主が、労働者からの申告等により、他の事業主の下における労働時間と通算すると1日8時間、週40時間を超えることを知っていたとは認められない。よって、労働時間通算による割増賃金支払義務を負わないと判断

副業促進と言いつつ、企業に他社での労働時間を通算して割増賃金の支払いを義務付けるという、めちゃくちゃややこしい制度になっています。まじめにやっている企業にとっては負担が大きいです。
ポストの裁判例は、企業が他社での就業を知らなかった場合は、通算して割増賃金を支払う義務を負わないという解釈を示しました。現行法のもとでの解決策としては妥当だと思いますが、この労基法38条1項は早急に改善が必要ですね!
労基法上刑罰をもって支払いが強制されている割増賃金の支払義務が、企業が知っているか知っていないかによって変わってくるというのもおかしな話だと思います。

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