判例・裁判例コラム

派遣会社が予定していた契約を得られなかったことを理由に行った内定取消の効力について判断した事例

大阪地裁H16.6.9
派遣会社が家電量販店からの業務委託契約を見込んで派遣する販売員を募集して内定を出し、研修した。しかし、その後予定の契約が得られず、内定を取り消した
→内定者との雇用契約において就業場所が本件店舗に限定されており、派遣会社は内定者に他の就業場所での就労を命じることもできない。派遣会社がこのように客観的に労働者を就労させることが不能となった労働契約を存続させる意思を有していたとは到底考えられないから、内定においては、このような事態に陥った場合の解約権が留保されていたものと推認するのが合理的。よって内定取消は有効と判断。
ただし、派遣会社は家電量販店との契約が得られず、就労が不能となる可能性の存在を告知して、それでも内定に応じるかどうかについて応募者に選択する機会を与えるべき信義則上の義務を負っており、この義務に違反したとして、派遣会社に対し、慰謝料20万円の支払命令。

パソコンの共有フォルダに保存した就業規則の効力前のページ

退職後6か月間、半径2キロ以内での独立開業を禁止する競業避止規定の効力次のページ

ピックアップ記事

  1. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  2. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  3. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  4. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  5. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    適応障害による休職からの復職後も異常行動がある従業員に対する再休職命令の効力

    大阪地裁R2.7.9適応障害で休職していた従業員が復職後から異常行動…

  2. 判例・裁判例コラム

    役員としての重大な不正を理由に従業員としての退職金を不支給にできる?

    東京地裁R6.1.29学校法人において教授等を務めていた職員が大学の…

  3. 判例・裁判例コラム

    部下の上司に対するハラスメントについての懲戒処分

    東京地裁R6.3.21上司に、自身のパソコンの画面を見られて…

  4. 判例・裁判例コラム

    就業規則に不備があれば退職金2回もらえる?

    大阪地裁R6.11.7出版会社が、就業規則で定年を60歳と定…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    合同労組に加入する従業員に時間外労働を命じないことは不法行為?
  2. 判例・裁判例コラム

    私傷病休職からの復職可否の審査に1か月超を要した場合にこの期間を無給とすることが…
  3. 判例・裁判例コラム

    形成外科医のオンコール当番待機時間は労働時間か?
  4. 判例・裁判例コラム

    就業規則に配転条項があっても職種限定契約であるとされた例
  5. 判例・裁判例コラム

    派遣会社が予定していた契約を得られなかったことを理由に行った内定取消の効力につい…
PAGE TOP