判例・裁判例コラム

特許事務所が入所時に従業員に提出させた競業避止義務の誓約の効力についての判断事例

大阪地裁H17.10.27
特許事務所が入所者に「退職後2年間は、事務所の顧客にとって競合関係を構成する特許事務所・法律事務所に就職しない」とする誓約書を提出させた。
→一応、再就職禁止先が限定されているが、「事務所の顧客にとって競合関係を構成する」との文言の意味は一義的に明確であるとはいい難い。この誓約を守るためには、退職者は事務所のすべての顧客が依頼している案件を把握したうえで再就職先がその顧客から依頼を受けているか否かを調査しなければならないが、本件で事務所は顧客から委任を受けている分野の一覧を開示するなどもしておらず、退職者は禁止される再就職先にあたるかどうかの判断もできない。さらに、退職者は弁理士の補助者にすぎず、高い地位、高い報酬を得ていたわけではないことなどを考慮すれば、誓約書の条項は退職者の職業選択の自由を不当に制約するものであり、無効と判断。

パソコンの共有フォルダに保存した就業規則の効力前のページ

退職後6か月間、半径2キロ以内での独立開業を禁止する競業避止規定の効力次のページ

ピックアップ記事

  1. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  2. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  3. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  4. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  5. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    運送業者におけるルート別単価による賃金支払は出来高払制にあたる?

    千葉地裁松戸支部R1.9.13運送業者が運送ルートごとに運行手当を定…

  2. 判例・裁判例コラム

    適応障害で休職し、東京本社に復職した従業員に対する、仙台への転勤命令の可否

    東京地裁R5.12.28適応障害で休職していた従業員が東京本社に復職…

  3. 判例・裁判例コラム

    懲戒処分前の弁明の機会付与に従業員側弁護士を同席させる義務はある?

    東京地裁R5.5.24懲戒解雇にあたり従業員に弁明の機会を付与。従業…

  4. 判例・裁判例コラム

    売上額に応じて支給される業績給は労基法施行規則19条6号の出来高払制賃金にあたる?

    東京地裁立川支部R5.8.9引越運送会社が運転手の給与について、基本…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    業務命令に応じない従業員への対応事例②
  2. 判例・裁判例コラム

    会社はどこまで注意喚起すれば安全配慮義務を果たしたといえる?
  3. 判例・裁判例コラム

    売上額に応じて支給される業績給は労基法施行規則19条6号の出来高払制賃金にあたる…
  4. 判例・裁判例コラム

    懲戒処分としての降格に伴い基本給、役付手当を減額することは有効か?
  5. 判例・裁判例コラム

    合同労組に加入する従業員に時間外労働を命じないことは不法行為?
PAGE TOP