判例・裁判例コラム

給与担当者が情報を他の職員に漏らしたことに対する叱責がパワハラにあたるとされた事例

那覇地裁R5.6.27
専務から、社員の昇給、昇格の見直しについて事前に聴いていた給与事務担当者が、他の社員にこれを話した。専務は「あなたがなんで自分で判断するの。職員に話して、大馬鹿野郎じゃないの。大問題だよ。これこそ懲罰事項になるんだよ。給与担当というのはね、こういったことに関して非常に敏感にならないといけない。社員は仲間かもしれないけど、あなたは管理者側に立たないといけないんだよ。大問題だよこんなこと。」などと叱責。

→具体的に社員への他言を禁止されていない以上、就業規則上の懲戒事由には該当せず、それにもかかわらず、「懲罰事項になる」、「大馬鹿野郎」、「大問題」などと過激な言葉で叱責したことは、パワーハラスメントして不法行為に該当する。給与事務担当者として知った事実を他の職員に話したことについて指導という正当な理由に基づいてされた叱責であり、その内容も、人格非難にまで及ぶものではなく、他の職員の面前でされたものではない1回限りのものであること等を踏まえれば、慰謝料額としては3万円が相当と判断。

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