業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)

判例・裁判例コラム

業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)

事件の概要

従業員が、会議への参加や業務の引き継ぎ等の業務命令に応じないため、まず、書面で業務命令を行った。しかし、それでも応じないので、書面による厳重注意をし、再度書面で同様の業務命令を出した。これにも応じないので、このままでは懲戒を検討せざるを得ないことを記載のうえ、言い分があるのであればメールで返信するか面談を希望するのであればその旨連絡してくださいとメールで連絡した。これに対して従業員から期限までに返信がなかったので、けん責の懲戒処分を行った。

そのうえで、再度同様の業務命令を書面で出した。しかし、それでも応じないので、書面による厳重注意をし、再度書面で同様の業務命令を出した。これにも応じないので、このままでは懲戒を検討せざるを得ないことを記載のうえ、言い分があるのであればメールで返信するか面談を希望するのであればその旨連絡してくださいとメールで連絡した。これに対して従業員から期限までに返信がなかったので、減給の懲戒処分を行った。

そのうえで、再度同様の業務命令を書面で出した。しかし、それでも応じないので、書面による厳重注意をし、再度書面で同様の業務命令を出した。これにも応じないので、このままでは懲戒を検討せざるを得ないことを記載のうえ、言い分があるのであればメールで返信するか面談を希望するのであればその旨連絡してくださいとメールで連絡した。これに対して従業員から期限までに返信がなかったので、5日間の出勤停止処分を行った。

そのうえで、再度同様の業務命令を書面で出した。しかし、それでも応じないので、書面による厳重注意をし、再度書面で同様の業務命令を出した。これにも応じないので、このままでは懲戒を検討せざるを得ないことを記載のうえ、言い分があるのであればメールで返信するか面談を希望するのであればその旨連絡してくださいとメールで連絡した。これに対して従業員から期限までに返信がなかったので、10日間の出勤停止処分を行った。

そのうえで、再度同様の業務命令を書面で出した。しかし、それでも応じないので、書面による厳重注意をし、再度書面で同様の業務命令を出した。これにも応じないので、このままでは懲戒を検討せざるを得ないことを記載のうえ、言い分があるのであればメールで返信するか面談を希望するのであればその旨連絡してくださいとメールで連絡した。これに対して従業員から期限までに返信がなかったので、会社から日を指定して面談に応じるように求めた。しかし、それにも応じないので、退職に応じるように通知し、応じない場合は解雇する予定であると通知した。

これに対し、従業員は会社に残りたいという内容の文書を送付してきたが、会社は再度退職届の提出を促し、応じなかったため普通解雇した。

裁判所の判断

従業員が業務命令に従わなかったことに対し、最も軽いけん責処分を行ってから順次段階を追って減給処分、5日間の出勤停止処分、10日間の出勤停止処分と重い処分を科して改善の機会を与えたことに加え、解雇に先だって退職勧奨をし、転職先を見つける猶予期間を設定したのであるから、解雇に社会通念上の相当性が認められる。解雇有効と判断。

就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)次のページ就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)

ピックアップ記事

  1. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  2. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  3. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  4. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  5. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    自宅待機中の従業員に対する出社命令

    東京地裁R6.4.24嫌いな人物はとことん追い詰める、高圧的な態度で…

  2. 判例・裁判例コラム

    通勤中の電車内で盗撮行為を行った課長を懲戒解雇した事案(控訴審)

    名古屋高裁R7.3.25課長が通勤中の電車内で口を開いたリュ…

  3. 判例・裁判例コラム

    大声で非難する発言を理由とするけん責処分

    東京地裁R6.6.27学校法人において、養護教諭の業務負担が過剰であ…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    在宅勤務日のさぼり行為が発覚した場合に解雇できる?
  2. 判例・裁判例コラム

    上司とトラブルが絶えない従業員に対する退職勧奨が違法とされた例
  3. 判例・裁判例コラム

    私傷病休職の期間を会社の判断で延長できる?
  4. 判例・裁判例コラム

    1年単位の変形労働時間制を定める就業規則の不備
  5. 判例・裁判例コラム

    8月1日~9月30日の有給休暇届を8月30日に提出したら9月の有給は認められるか…
PAGE TOP