大阪地裁H28.6.9
生命保険会社の事務職員が同僚からストーカー行為を受けているなどと被害申告。総務部長は、この同僚に事情確認したが、身に覚えがないとの回答であり、事務職員が主張する事実は確認できなかったため、その旨を事務職員に回答した。しかし、その後も事務職員は、社内のセクハラ相談室、コンプライアンス相談室に頻繁に被害申告を行った。会社はこの事務職員にコンプライアンス推進室長及び大阪人事室長の連名による改善指導書を手渡し、その中で、客観的事実が認められないにもかかわらず、特定個人を問題視した問い合わせを行わないこと等を求めた。しかし、その後も客観的事実が認められない特定個人を対象としたメールをコンプライアンス室等に送信することを続けたため、就業規則の「職員はその他上記に準ずる事項で職場秩序を乱し、またはそのおそれを発生させてはならない。」に違反したとして戒告処分を行った。事務職員は戒告処分の無効確認と慰謝料の支払いを求めて訴訟を提起
→①事務職員が今までにした申告の回数があまりに多く、それについて書面で注意を受けたりしたものの、繰り返したため、改善指導に至ったこと、②改善指導後、事務職員がなおもメールで申告したことについて、改善指導に従うようメールで注意したが、事務職員はこれに従わない旨の回答をしたこと、③処分内容がもっとも軽微な戒告であることなどを総合すれば、本件の戒告処分が懲戒権を濫用したものということはできない。事務職員は、ストーカーなど客観証拠の確保が困難な行為について、会社が新たな証拠の提示を求めるのは不当であるなどと主張するが、事実が確認されなかった以上、証拠提出が困難であるとしても、新たな証拠を提出することを求めるのが不当とは言えない。同僚がストーカー行為をしている等の申告は、その性質上、当該同僚の名誉を毀損するものであることは否定できないところ、無制限に許容されるということはできない。戒告処分は有効と判断