判例・裁判例コラム

私傷病休職からの復職者の症状が悪化したときの対応〜休職期間がもう残っていない場合はすぐに退職扱いになるのか?

東京地裁R6.12.10

適応障害を発症して31日間の特別休暇取得後に休職していた従業員が93日間の私傷病休職を経て復職。しかし、その翌月、会社は、この従業員について再休職が必要な状態になったと判断。就業規則では、休職の上限日数は93日であり、同一または関連傷病による再休職の場合は、すでに取得した休職期間を休職の上限日数から差し引く旨の規定あり。休職期間がもう残っていなかったため、会社は休職期間満了により自然退職になった旨をこの従業員に通知した。
→カルテによればドグマチールの処方量が増やされており、症状は特別休暇取得開始時と比較しても、必ずしも改善傾向になかった。復職後、会社は業務量をかなり軽減し、それによって生じた余分な時間に演習問題を行うようにこの従業員に指示していたが、従業員はこれを行うことができておらず、業務遂行能力はかなりの程度減退していたと認められる。さらに復職後に職場のトイレに閉じこもり、「死ぬまで仕事をする 」と発言するなどしており、その行動は健康な心身の状態にある者の行動とは言えない。会社が指定した医師はこの従業員と面談し、症状が強く就労は不能で自宅療養が必要と判断している。再度、就業規則の休職事由に該当したというべきであり、休職期間満了により退職となったというべきであると判断。

サイボウズの記録に基づく残業代請求が認められなかった事例前のページ

労働者代表の同意を得て労基署長に届け出たが周知されていない就業規則に基づく懲戒解雇次のページ

ピックアップ記事

  1. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  2. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  3. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  4. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  5. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    売上額に応じて支給される業績給は労基法施行規則19条6号の出来高払制賃金にあたる?

    東京地裁立川支部R5.8.9引越運送会社が運転手の給与について、基本…

  2. 判例・裁判例コラム

    賃金減額について定める給与規程の不備

    東京地裁R5.1.11不動産会社が、給与規程において「同一等…

  3. 判例・裁判例コラム

    教頭を侮辱的な言葉で非難する教員に対する懲戒処分

    東京地裁R6.6.27高校の教員らで組織する組合の執行委員長を務めて…

  4. 判例・裁判例コラム

    役付手当を固定残業代と位置付ける賃金規程の効力について判示した事例

    名古屋高裁R2.5.20賃金規程に「役付手当は、課長、所長代理以上を…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    派遣会社が予定していた契約を得られなかったことを理由に行った内定取消の効力につい…
  2. 判例・裁判例コラム

    1年単位の変形労働時間制を定める就業規則の不備
  3. 判例・裁判例コラム

    配転命令を受けた従業員からの職種限定合意の主張が認められなかった事例
  4. 判例・裁判例コラム

    ジョブ型雇用の従業員について、担当業務が廃止された場合の解雇の有効性
  5. 判例・裁判例コラム

    正社員に寒冷地手当を支給するが契約社員には支給しないことは違法?
PAGE TOP