判例・裁判例コラム

労働者代表の同意を得て労基署長に届け出たが周知されていない就業規則に基づく懲戒解雇

最高裁H15.10.10

化学プラント設計等を事業とする会社の設計部門のあるセンターに勤務していた従業員が得意先の担当者らの要望に十分応じずトラブルを発生させたり、上司に暴言を吐くなどとして職場の秩序を乱したことなどを理由に懲戒解雇された。大阪地裁、大阪高裁はこの懲戒解雇を有効と判断。従業員が上告した。
→使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要する。そして、就業規則が拘束力を生ずるためには、その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要する。高裁判決は、労働者代表の同意を得て就業規則を制定し、労働基準監督署長に届け出た事実を確定したのみで、その内容をセンター勤務の労働者に周知させる手続が採られていることを認定しないまま、懲戒解雇が有効であるとしており、その判断には違法がある。高裁判断を破棄

私傷病休職からの復職者の症状が悪化したときの対応〜休職期間がもう残っていない場合はすぐに退職扱いになるのか?前のページ

就業規則に配転条項があっても職種限定契約であるとされた例次のページ

ピックアップ記事

  1. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  2. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  3. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  4. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  5. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    職場内で秘密録音したデータを民事訴訟の証拠として利用できる?

    東京高裁R5.10.25歯科医院に勤務する職員が、理事長が院内で自身…

  2. 判例・裁判例コラム

    ジョブ型雇用における能力不足解雇

    東京地裁H28.6.1海外証券会社の日本法人が営業職を解雇→本件労働…

  3. 判例・裁判例コラム

    現勤務先の利益より、元勤務先への義理を優先してよい?

    東京地裁R6.10.23不動産売買を事業とする会社の従業員が…

  4. 判例・裁判例コラム

    熱中症で亡くなった従業員の遺族からの損害賠償請求

    福岡地裁小倉支部R6.2.13従業員がサウジアラビア出張中の屋外作業…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    労働者の適性を判断する試用目的での有期雇用契約
  2. 判例・裁判例コラム

    配転命令を受けた従業員からの職種限定合意の主張が認められなかった事例
  3. 判例・裁判例コラム

    まじめな職員が業務を期限までに終えられないことを苦に自殺したことについて、積極的…
  4. 判例・裁判例コラム

    労災認定されて休業中の従業員の解雇
  5. 判例・裁判例コラム

    在職中の成果物を削除した退職者に対して会社が損害賠償請求した事例
PAGE TOP