判例・裁判例コラム

精神疾患による休職を隠して応募した労働者。試用期間中の解雇は有効か?東京地裁の判断

東京地裁R5.7.28
病院がシステム開発経験者を募集。
応募者は、職務経歴書に、平成30年4月から令和3年3月まで社内SE(システムエンジニア)として勤務し、そのうち令和2年12月から令和3年3月までは「漢字カナ氏名変換ツール」の開発業務に従事していたと記載していた。
しかし、採用後、総務担当者が、源泉徴収票に記載された前職からの賃金支払額が少ないことに気づいて質問。応募直前の令和2年12月から令和3年3月まで精神疾患により休職していたことが判明した。病院はこの従業員を試用期間満了を待たずに解雇。
→職務経歴書の記載は、令和2年12月から令和3年3月まで「漢字カナ氏名変換ツール」の開発業務に従事していたとする内容であり、応募時に故意に事実に反する説明をしたと認められる。これは就業規則の解雇事由である「試用期間中の者で職員として不適格と認めたとき」にあたる。その他、採用時に想定されていたSEとして2年程度の経験に応じた職務遂行能力を有しないという能力不足の解雇事由もある。解雇有効と判断。

この事案で、労働者は、休職していた期間についても、業務への復帰を前提に進捗状況を把握し、チームメンバーからは進捗状況等の報告を週1回程度受け、業務の下準備をしていたから、職務経歴書の記載は虚偽ではないという趣旨の主張もしています。
しかし、裁判所は、この説明を前提としても、週1回の進捗状況の把握や下準備にとどまるから、休職していた期間について業務を実質的に行っていたとは認められないとして、労働者が応募にあたり、故意に事実に反する説明をしたと評価しました。

仕事のミスで適応障害に…それでも“業務起因”は否定された―大阪地裁判決前のページ

「3月末定年」を“誕生日退職”に変更!最大1年の賃金が消える就業規則変更の効力は?次のページ

ピックアップ記事

  1. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  2. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  3. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  4. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  5. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    東京地裁R7.9.10

    ラーメン店を営業する会社が、店舗従業員について特例措置対象事業場とし…

  2. 判例・裁判例コラム

    全国に点在する労働者の一斉解雇

    東京地裁R3.12.21全国に300店を擁する居酒屋チェーンが、コロ…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    高額な歩合給制度の問題点
  2. 判例・裁判例コラム

    東京地裁R4.12.2
  3. 判例・裁判例コラム

    PIP実施方法の問題点が指摘され、解雇が無効とされた事例
  4. 判例・裁判例コラム

    うつ病での服薬治療等のみを理由とする退職勧奨が違法とされた事案
  5. 判例・裁判例コラム

    始業時刻前の出勤は「自主的」だから残業代を払わなくてもよい?東京高裁の判断!
PAGE TOP