判例・裁判例コラム

会社の要請に反する行動を理由とする降格

仙台高裁R5.1.26
基本給=等級給+評価給と定め、等級給は等級に応じて決定される会社が、等級制度規程で、下位等級への降格は、「① 過去2年間の人事考課がC以下であること」「② ①以外でも現在の等級に在籍していることが不適当と認められること」のいずれかの要件を満たす者の中から降格審議にて決定すると定めた。7等級の課長補佐がコロナ対策として会社から懇親会等の開催自粛を要請され、それを部下らに説明した当日の夜に部下と深夜3時まで飲酒を続け、部下が飲酒運転による事故を起こした。これを受け、会社はこの課長補佐を6等級に降格させて、等級表に基づき基本給を1割減額した
→会社から懇親会等の自粛について説明を受けてそれを部下らに説明した当日に部下と飲酒し、部下が飲酒運転による事故を起こして自主退職せざるを得ない状況を招いたことは、重要な役職に任命されていた者として重く受け止めるべきことではある。しかし、下位等級への降格の要件②の「現在の等級に在籍していることが不適当と認められること」に該当するためには、①の「過去2年間の人事考課がC以下であること」と同等かそれ以上の事由が必要。会社の自粛要請は職務上の業務命令とまでは言えないうえ、飲酒は3名の少人数で行われており、会社の要請に反する行為とも言えない。部下の飲酒運転という事態があるとしても、それが課長補佐が社員としての職責に違反した行為によるとはいえず、要件②の「現在の等級に在籍していることが不適当と認められること」に該当する職務上の重大な義務違反とは評価できない。等級の引き下げとこれに基づく基本給の減額は無効と判断

不当な復職拒否をしてしまった後、これを撤回するために会社がとるべき行動とは?前のページ

小規模企業の整理解雇では役員報酬の削減が必要?次のページ

ピックアップ記事

  1. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  2. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  3. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  4. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  5. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    1年以上服薬せずに日常生活を送っていた休職者の復職可否判断

    名古屋地裁R3.8.23躁うつ病(双極性障害)で休職していた休職者が…

  2. 判例・裁判例コラム

    就業規則に休職期間の延長規定を設けた場合の効力

    大阪地裁R3.7.16社会福祉法人が就業規則で私傷病休職の期間につい…

  3. 判例・裁判例コラム

    ジョブ型雇用の従業員について、担当業務が廃止された場合の解雇の有効性

    東京地裁R6.9.20メガバンクが、職務内容をジャパンストラテジスト…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    会社が60年以上続けていた従業員への年3000円の支給を中止したことが争われた事…
  2. 判例・裁判例コラム

    役員としての重大な不正を理由に従業員としての退職金を不支給にできる?
  3. 判例・裁判例コラム

    「頭おかしいから。」「水商売やってた人間が。」などと部下を罵倒した支配人を普通解…
  4. 判例・裁判例コラム

    住民票記載事項証明書の不提出を理由とする解雇の有効性
  5. 判例・裁判例コラム

    過半数代表選出にあたり無投票者は有効投票にみなすと定めた場合の効力
PAGE TOP