判例・裁判例コラム

自宅待機状態を続けさせたことが違法な退職勧奨であるとされた事例

東京地裁R6.4.24
嫌いな人物はとことん追い詰める、高圧的な態度で1時間以上自席の前に立たせて説教する、上司からの改善指導にも激昂して反抗するなどの問題があった職員について、銀行が退職勧奨を行い、自宅待機を命じた。銀行は自宅待機命令後も給与を支払いつつ、職員と面談を実施するなどしていたが、職員が職場復帰を求めて紛争化。4年半にわたり自宅待機を継続させた。
→復帰先も提示されないまま長期間にわたり自宅待機状態が続けられたことからすれば、自宅待機期間中も実質的にみて退職勧奨が継続していたというべきである。退職勧奨は強制にわたることは許されない。職員が面談において復帰を明確に求めた後も具体的な復帰先を提示せず自宅待機を続けさせたことは実質的にみて退職以外の選択肢を与えない状態を続けたものといえ、違法である。慰謝料300万円の支払命令。

自宅待機中の従業員に対する出社命令前のページ

実質個人経営の居酒屋を経営する会社代表者の責任次のページ

ピックアップ記事

  1. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  2. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  3. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  4. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  5. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)

関連記事

  1. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大阪地裁R6.3.27)
  2. 判例・裁判例コラム

    半期ごとの業績評価により賃金を最大2割減額する規定の効力

    東京地裁R6.8.8半期(4〜9月、10月〜3月)ごとに成績…

  3. 判例・裁判例コラム

    適応障害で休職し、東京本社に復職した従業員に対する、仙台への転勤命令の可否

    東京地裁R5.12.28適応障害で休職していた従業員が東京本社に復職…

  4. 判例・裁判例コラム

    過半数代表選出にあたり無投票者は有効投票にみなすと定めた場合の効力

    松山地裁R5.12.20大学が過半数代表者選出規程に、信任投票で投票…

  5. 判例・裁判例コラム

    業務に消極的な態度をとり、執務態度を改めない従業員の解雇

    東京地裁H28.3.28大企業が大学院卒勤続12年の正社員を…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    長距離トラックの運転手が、高速道路の路肩やコンビニエンスストアの駐車場等で駐車し…
  2. 判例・裁判例コラム

    懲戒解雇を社内で公示したことが名誉毀損にあたる?
  3. 判例・裁判例コラム

    形成外科医のオンコール当番待機時間は労働時間か?
  4. 判例・裁判例コラム

    取締役が退職を申し出た従業員について「自閉症や対人恐怖症ではないかと言う人もいた…
  5. 判例・裁判例コラム

    まじめな職員が業務を期限までに終えられないことを苦に自殺したことについて、積極的…
PAGE TOP