東京地裁R6.6.27
従業員が人事部に対してハラスメントの被害を申告し、調査を求めた。
そこで、会社は、調査が行われていることや調査の過程で聞かれた人物の名前など、調査の内容に関しては、調査担当者を除き、社内・社外を含め、一切誰にも話してはならないとする秘密保持契約書に署名させたうえで調査を開始。その後、ハラスメントを裏付ける証拠がなかった旨の結果をこの従業員に報告した。
従業員は、調査結果には納得できないとして、親会社や関連会社の経営陣・幹部・従業員らに不服を訴えるメールを繰り返し送信した。会社はこれをやめるように何度も警告したが、従業員はそれでも同様の行為を続けたため、業務命令違反・秘密情報漏洩を理由にけん責処分をおこなった。そして、けん責処分後、解雇を警告されても同様の行為を続けたため、普通解雇した。
→調査において秘密が守られない場合があることが職場で知られると、今後の調査に支障をきたし、真実が解明されない恐れがあるとともに、従業員からの苦情申し立てが抑制されるおそれがある。また、加害者と名指しされた者の名誉が毀損され、職場の人間関係に対立が生じる。さらに、経営陣においては、従業員から不服のメールを受けることによって、本来的な業務に妨げが生じる。したがって、会社が被害事実等について人事担当者等以外のものに伝達しないように求めた業務命令には業務上の必要性がある。一方で、従業員に対しては調査担当者らが継続的に対応し、従業員が依頼した弁護士と相談することも禁じられたことはなかった。よって、業務命令は有効。
さらに、社外へのメール送信について、伝達した事実が真実とは認められず、真実と信じるに足りる相当な理由があるといえる根拠もない。また、不服を訴えた手段方法も、送信先がグルー内の経営陣、幹部に限定されていたことを踏まえても相当とは全くいえない。よって、けん責処分は有効。
そして、職場に戻すと同様の行為を繰り返すおそれが客観的にあるから、これによる業務の支障を回避するには解雇するよりほかなく、解雇も有効と判断。