判例・裁判例コラム

ジョブ型雇用の会社でジョブが廃止されたことによる整理解雇は有効?

東京地裁R4.4.12
ジョブ型雇用の外資系金融機関で部門廃止により人員削減の必要性が生じた。会社は職位が消滅する従業員に対し、社内公募されているポジションが8つあることを説明したうえで、応募の意思や従業員の希望を聴取した。しかし、従業員が社内公募に応募しなかったため、整理解雇。従業員は、社内公募案件を紹介しただけではこれに応募しても合格して採用されるかどうかわからないから、会社が積極的に異動先を用意して解雇回避に努める必要があったと主張。
→会社は、従業員の希望を聴取して社内公募案件のポジションを提示するなど、従業員が会社又はそのグループ会社内で勤務し続けることができるようにするための手段をとることができる機会を与えており、さらに、解雇までの約1年間にわたって、解決策を協議するために面談を求めたり、退職金以外に約1146万円を支払うことなどを内容とする退職パッケージを示すなどして退職勧奨をし、相当期間の生活を保障しながら、従業員が社外でポジションを見つける機会も提供している。従業員は、採用の保証のあるポジションの提示をすべきであった旨を主張するが、それは、ジョブ型雇用の人事制度をとっている会社に対し、特別な措置をとることを求めることに等しいものである。会社は会社都合で職位を消滅させたとはいえ、他の従業員との公平性を害しかねないそのような特別な措置をとることまで要求されない。整理解雇は有効と判断。

パソコンの共有フォルダに保存した就業規則の効力前のページ

退職後6か月間、半径2キロ以内での独立開業を禁止する競業避止規定の効力次のページ

ピックアップ記事

  1. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  2. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  3. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  4. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  5. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    パソコンの共有フォルダに保存した就業規則の効力

    東京地裁H31.3.25 派遣会社が、就業規則で退職後に自社の機密情…

  2. 判例・裁判例コラム

    メンタル休職から復職して21か月後の秋田への転勤命令

    東京地裁R5.12.14保険業を行う一般財団法人が、適応障害…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?
  2. 判例・裁判例コラム

    試用期間中に逮捕・勾留された従業員を解雇した事案
  3. 判例・裁判例コラム

    1年以上服薬せずに日常生活を送っていた休職者の復職可否判断
  4. 判例・裁判例コラム

    年下の女性上司に不満をあらわにし、大声を出して机を叩くなどといった威圧的な態度を…
  5. 判例・裁判例コラム

    社内で上司に対する暴行事件!懲戒処分は刑事処分の結果を待つべきか?最高裁の結論
PAGE TOP