判例・裁判例コラム

病気休暇中の職員に対し、休暇延長・休職の選択肢があることを示さずに退職勧奨を行った事案

宇都宮地裁R5.3.29
双極性感情障害のために傷病休暇中の県職員が退職勧奨を受け退職願を提出したが、その後取り消しを求めた。

→職員は退職勧奨の面談の冒頭で、常時耳鳴りやめまいがすること、頭の回転が落ちており本来の自分と比べて30%程度の状態であることなどを説明しており、28年余にわたる公務員としての身分を失うという人生の重要局面における決断を、熟慮の上でなし得るような病状であったとはいい難い。上司らは面談の際、これまでずっと職場に甘えてきたのではないかなどと職員を責めるようなことを告げており、休暇延長や休職という選択肢を明示的に示すことがなかった。職員の立場で複数の選択肢を示すなどのアドバイスをする者もおらず、職員は主治医や家族を含め誰にも相談することなく、面談のわずか2日後に退職願を提出している。熟慮することができないまま退職の選択肢しかないという思考に陥った結果、退職願を提出するに至ったものであり、退職願は自由な意思に基づくものとはいえない。県の辞職承認処分は違法と判断。

パソコンの共有フォルダに保存した就業規則の効力前のページ

退職後6か月間、半径2キロ以内での独立開業を禁止する競業避止規定の効力次のページ

ピックアップ記事

  1. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  2. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  3. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  4. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  5. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…

関連記事

  1. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.5.15)
  2. 判例・裁判例コラム

    人事考課に基づく降格・賃金減額の有効性

    東京地裁R4.1.31地道なテレアポ営業に熱心に取り組まず、…

  3. 判例・裁判例コラム

    セクハラ被害の訴えと休職期間の満了

    東京地裁R6.11.14食品販売会社が精神疾患で休職していた…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    懲戒解雇を社内で公示したことが名誉毀損にあたる?
  2. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)

    判例・裁判例コラム

    業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  3. 判例・裁判例コラム

    能力主義的賃金制度導入の失敗例
  4. 判例・裁判例コラム

    夏季休暇が「休日」なのか「休暇」なのか、が争点になった裁判例
  5. 判例・裁判例コラム

    うつ病での服薬治療等のみを理由とする退職勧奨が違法とされた事案
PAGE TOP