判例・裁判例コラム

賃金規程に基づいてした給与等級引き下げの効力について判断された事例

東京高裁H19.2.22
年功型賃金から成果主義賃金への変更にあたり、賃金規程に「評価の結果、本人の顕在能力と業績が、属する給与等級に期待されるものと比べて著しく劣ると判断した際は、給与等級と処遇を下げることもあり得る」と定めた。これに基づいて評価がよくなかった従業員の給与等級を引き下げた。
→上記規定は「本人の顕在能力と業績」に着目することにより、外部に表れた従業員の行為とその成果を降級の基準としている。そうであれば、会社は人事評価につき裁量があるとしても、降級については、根拠となる具体的事実を挙げて、本人の顕在能力と業績が、本人の属する給与等級に期待される水準と比べて著しく劣ることの立証を要する。本件ではこの立証がないとして給与等級引き下げを認めず、会社に対し、引き下げ前との差額分の賃金の支払命令。

パソコンの共有フォルダに保存した就業規則の効力前のページ

退職後6か月間、半径2キロ以内での独立開業を禁止する競業避止規定の効力次のページ

ピックアップ記事

  1. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  2. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  3. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  4. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  5. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    残業代の支払期日

    さいたま地裁H29.4.6就業規則で職員の給与について毎月末日締め当…

  2. 判例・裁判例コラム

    半期ごとの業績評価により賃金を最大2割減額する規定の効力

    東京地裁R6.8.8半期(4〜9月、10月〜3月)ごとに成績…

  3. 判例・裁判例コラム

    自宅待機中の従業員に対する出社命令

    東京地裁R6.4.24嫌いな人物はとことん追い詰める、高圧的な態度で…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    出来高払制賃金といえるためには自助努力が反映される賃金であることが必要か?
  2. 判例・裁判例コラム

    パソコンの共有フォルダに保存した就業規則の効力
  3. 判例・裁判例コラム

    在職中の成果物を削除した退職者に対して会社が損害賠償請求した事例
  4. 判例・裁判例コラム

    休職期間満了による退職を6か月経過してから通知した事例
  5. 判例・裁判例コラム

    午前9時を始業時刻とする会社で午前8時より前にタイムカードがされていた場合の早出…
PAGE TOP