判例・裁判例コラム

賃金規程に基づいてした給与等級引き下げの効力について判断された事例

東京高裁H19.2.22
年功型賃金から成果主義賃金への変更にあたり、賃金規程に「評価の結果、本人の顕在能力と業績が、属する給与等級に期待されるものと比べて著しく劣ると判断した際は、給与等級と処遇を下げることもあり得る」と定めた。これに基づいて評価がよくなかった従業員の給与等級を引き下げた。
→上記規定は「本人の顕在能力と業績」に着目することにより、外部に表れた従業員の行為とその成果を降級の基準としている。そうであれば、会社は人事評価につき裁量があるとしても、降級については、根拠となる具体的事実を挙げて、本人の顕在能力と業績が、本人の属する給与等級に期待される水準と比べて著しく劣ることの立証を要する。本件ではこの立証がないとして給与等級引き下げを認めず、会社に対し、引き下げ前との差額分の賃金の支払命令。

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