判例・裁判例コラム

他の勤務先での就業状況を知らなかった場合でも通算による割増賃金の支払義務があるか?

東京高裁H30.9.26
運送会社で日給1万円の日雇いで勤務していたアルバイトが、この会社のほかに別の勤務先で週40時間勤務していたから、労働基準法38条1項により、労働時間が通算されて、運送会社での勤務は時間外労働となると主張。割増賃金を請求した。
→労働者が他の事業主の下でも労働しており、かつ、その労働時間数と通算すると1日8時間、週40時間を超えることを使用者が知らなかったときには、その使用者は、労働基準法38条1項の通算規定による割増賃金の支払義務を負わない。本件で、運送会社はアルバイトが他でも勤務しているという認識はあったが、他の勤務先との間で勤務時間を通算すると、1日8時間、週40時間を超えることを認識していたとはいえない。よって、運送会社に、通算規定に基づく割増賃金の支払義務はないと判断

参考:労働基準法38条1項
労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。

その他の参考裁判例
https://www.rodo.co.jp/news/196606/

業務に消極的な態度をとり、執務態度を改めない従業員の解雇前のページ

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