東京地裁R3.12.22
職員約900名の法人が新卒者を月給約21万円、試用期間3か月で採用。法人は、試用期間を1回延長したが、その後、この職員が基本的なミスを繰り返し、注意指導による改善が見込めない、円滑なコミュニケーションができないなどとして解雇した
→職員が注意指導を受けた勤務状況には、ファイルの入力作業における入力の誤りや入力漏れ、スキャン後の書類の誤った部署への回付など基本的な事項が多数ある。試用期間延長の前後を通じて基本的なミスを繰り返していた。もっとも、ミスによる影響は、幸いにも法人内部にとどまり、同僚や関連部署の業務に支障を生じさせても、法人に損害を与える性質のものではなかった。
他方で、部長らがこの職員に注意指導した項目の中には、例えば、ファイルの箱詰め作業においてファイルの上下を間違えるなどといった直ちにミスや不備とはいい難いものも含まれている。些細な遅れや不手際も含め、広範に注意され、職員はこのような注意指導に対し、反発することはなくメモを取るなどして改善の姿勢を見せていた。メモをした内容がその後の作業に活かされていないなどの指摘を受け、同じことを二度質問してとがめられたこともあり、そのような中で萎縮して業務を行い、必要な質問や確認ができないことにより更なるミスを誘発した面も否定できない。勤務不良の程度が重大で改善の見込みがないと直ちにいうことはできず、他部署への配転等により改善の機会を与え、解雇の適否を慎重に判断すべきだった。試用期間中であったことを考慮しても解雇無効と判断