判例・裁判例コラム

65歳まで継続雇用されるためには定年前に退職することを要する制度は高年法違反?

東京地裁R7.3.27

60歳定年の会社が高年齢者雇用安定法(高年法)に基づき継続雇用制度を導入。①継続雇用制度を利用する際は、定年前の58歳で退職する必要があり、退職後に契約社員として再雇用され、以後65歳を上限として更新される、②58歳~60歳の賃金は、退職時給与の約60%となるという内容。従業員の1人が、高年法の継続雇用制度は、定年まで雇用されている労働者が希望すれば定年退職後も引き続き雇用される制度であることを要すると主張。会社の制度は65歳までの継続雇用を希望する場合は定年前の58歳で退職せざるを得ないから、実質的には58歳を定年とするものであり、全体として高年法に反すると主張した
→高年法は60歳を下回る定年を定めることを禁じている。この「定年」とは、労働者が所定の年齢に達したことを理由として自動的に又は解雇の意思表示によってその地位を失わせる制度。本件で従業員は継続雇用制度を利用せずに60歳で定年退職することを選択できるから、会社が定年を58歳と定めたとはいえない。また、高年法の継続雇用制度が定年まで雇用されている労働者が希望すればその定年退職後も引き続き雇用される制度であることを要するともいえない。会社の制度は高年法に違反しないと判断

注意指導を受けている最中に、その様子を無断録画した職員の解雇前のページ

合同労組に加入する従業員に時間外労働を命じないことは不法行為?次のページ

ピックアップ記事

  1. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  2. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  3. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  4. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  5. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例

    宮崎地裁R6.5.15平均月56時間の時間外労働をしていた係長が突然…

  2. 判例・裁判例コラム

    賃金減額について定める給与規程の不備

    東京地裁R5.1.11不動産会社が、給与規程において「同一等…

  3. 判例・裁判例コラム

    クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?

    宮崎地裁R6.5.15食品販売会社の係長が37歳で自宅で突然死。→死…

  4. 判例・裁判例コラム

    就業規則に休職期間の延長規定を設けた場合の効力

    大阪地裁R3.7.16社会福祉法人が就業規則で私傷病休職の期間につい…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    給与担当者が情報を他の職員に漏らしたことに対する叱責がパワハラにあたるとされた事…
  2. 判例・裁判例コラム

    就業規則変更による勤務日変更の効力
  3. 判例・裁判例コラム

    リハビリ勤務の規定をおけばリハビリ勤務を認める義務がある?
  4. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大阪地裁R6.3.27)

    判例・裁判例コラム

    232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  5. 判例・裁判例コラム

    不当な復職拒否をしてしまった後、これを撤回するために会社がとるべき行動とは?
PAGE TOP