判例・裁判例コラム

初めて就業規則を作ったら“労働条件の不利益変更”!? 7時間半→8時間で会社が負けた判決

東京地裁R7.3.18

就業規則がなかった会社が新たに就業規則を作成。その際、就業規則で1日の所定労働時間を8時間と定め、それまで所定労働時間7時間半だった従業員にもこれを適用した
→労働契約法9条、10条の趣旨は、新たな就業規則の作成による労働条件の変更についても及ぶ。従業員は、就業規則の作成により、賃金を増額されることなく、より多くの休日を付与されることもなく、1日の所定労働時間が30分間延長されることとなるのであるから、労働条件を不利益に変更するものであり、会社の経営状態の悪化が継続していたとはいえないこと等に照らすと、不利益を労働者に受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性があったとまでは認め難い。就業規則の作成によって、所定労働時間が1日7時間30分から8時間に変更されたということはできないと判断

妥当な判断だと思います。 労働契約法10条は就業規則の変更により労働条件を不利益に変更する場合の規定ですが、就業規則を新たに作成することにより労働条件を不利益に変更する場合も同様の判断基準がとられることを示しました。
就業規則を初めて作る会社も「不利益変更」に注意する必要があります

送別会で酩酊して助け起こされた女性がセクハラ被害を訴えて欠勤。会社は無断欠勤を理由に懲戒解雇!名古屋地裁の判断は?前のページ

ピックアップ記事

  1. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  2. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  3. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  4. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  5. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    合同労組に加入する従業員に時間外労働を命じないことは不法行為?

    福岡地裁小倉支部R7.3.27運送会社に勤務する運転手らが合同労組に…

  2. 判例・裁判例コラム

    就業規則による民法536条2項の適用排除が認められた例

    函館地裁S63.2.29タクシー会社が人身死亡事故を起こした乗務員を…

  3. 判例・裁判例コラム

    些細なミスを広範に注意した後の能力不足解雇

    東京地裁R4.2.2職員約900名の法人が新卒者を月給約21…

  4. 判例・裁判例コラム

    ジョブ型雇用における能力不足解雇

    東京地裁H28.6.1海外証券会社の日本法人が営業職を解雇→本件労働…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    抑うつ状態で1年近く出勤しない職員の解雇が、仮に就業できない状態であったとしても…
  2. 判例・裁判例コラム

    長時間労働者に早く帰宅するように指導しても帰らない場合に会社がとるべき対応
  3. 判例・裁判例コラム

    早出残業の残業代請求が認められた事例
  4. 判例・裁判例コラム

    送別会で酩酊して助け起こされた女性がセクハラ被害を訴えて欠勤。会社は無断欠勤を理…
  5. 判例・裁判例コラム

    シフト表の記載による休日の振り替え
PAGE TOP