判例・裁判例コラム

ジョブ型雇用の期待外れ解雇は有効?東京地裁の判断事例。

東京地裁R4.2.22
欧州連合が日本で広報担当者を雇用したが、上司から指示された業務の期限に遅れることを繰り返し、また上司への報告を怠る、事実と異なる回答をするなどの問題があったため、普通解雇
→就業規則所定の「職務の遂行において不適格である」の解雇事由に該当し、解雇の客観的合理的理由が認められる。これに対し、従業員は、業務遂行能力に問題があったとしても、解雇に先立ち配置転換、譴責、降格等を行うべきであったと主張する。しかし、職種及び業務内容を定めて雇用契約が締結されており、遂行能力に問題がある場合に配置転換を行うことは想定されていない。また、募集要項において2年以上のウェブサイト管理の経験を含む5年以上の実務経験があることが応募条件とされていたことや、給与額が高額であること等の事情も考慮すれば、従業員には高度な専門性に加え、組織内の秩序に従い他の職員と協働して業務を行う高い能力が求められていたというべきであり、指導等による改善が想定されていたとはいえない。そして、使用者は解雇に先立ち繰り返し、注意、指導を行っており、従業員の職務遂行への不適格性は重大な程度に達していたことからすれば、従業員に対して懲戒処分等の措置をとることにより、職務遂行能力の改善が期待されるとも認められない。解雇有効と判断。

ジョブ型雇用の能力不足解雇が有効と判断された事例です。 裁判所は、解雇の前に配置転換や降格を経るべきだったという労働者側の主張を明確に排斥しました。
メンバーシップ型雇用では、解雇の前に配置転換や降格が求められますが、そのような手順を経なくても解雇が有効とされたことは、ジョブ型の人事制度を踏まえた判断であると感じます。
就業規則にも注目すべき点があります。 本件では、実態として配置転換を想定しないジョブ型の人事制度がとられており、就業規則でも「職務の遂行において不適格であること」が普通解雇事由として定められていました。
これに対し、厚生労働省のモデル就業規則では、勤務成績不良を理由とする解雇事由が「勤務成績又は業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない等就業に適さないとき。」と定められています。
本件で、厚生労働省のモデル就業規則と異なり、解雇事由に「他の職務にも転換できない等就業に適さないとき。」という他の職務への転換を想定した文言が入れられていなかったことは、配置転換を想定しないジョブ型の人事制度と適合しており、適切であったと考えられます。

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