判例・裁判例コラム

コンベア事故でも会社は責任なし?“手を入れるとは想定外”とした裁判所の判断

横浜地裁R7.11.28
労働者がコンベアの点検清掃作業中にコンベア内のスクリューに左手を巻き込まれて負傷する労災事故が発生。会社の安全配慮義務違反があったとして、会社に1300万円超の損害賠償請求をした。
労働安全衛生規則107条には「事業者は、機械(刃部を除く。)の掃除、給油、検査、修理又は調整の作業を行う場合において、労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、機械の運転を停止しなければならない。ただし、機械の運転中に作業を行わなければならない場合において、危険な箇所に覆いを設ける等の措置を講じたときは、この限りでない。」とあり、運転中に作業を行わなければならないのに、危険な箇所に覆いを設ける等の措置がされていなかったと主張した。
→〔1〕スクリューの刃が回転しているトラフに手を差し入れた場合に巻き込まれる危険性があることは、容易に予想できること、
〔2〕会社において作業手順は確立しており、少なくともコンベアの稼働中に手を入れてはいけないということが作業員に周知されていたこと、
〔3〕作業内容からして作業員が誤って手を入れることは想定しがたいこと
を総合すると、会社において、作業員がコンベア稼働中にトラフに手を入れて作業を行うことは想定できなかったことが認められる。
また、コンベアのトラフ全体に覆いをした状態で作業を行うとすると、点検清掃作業の完成度に難点があることが認められ、労働安全衛生規則107条1項ただし書における「機械の運転中に作業を行わなければならない場合」とは、ベルトコンベアのベルトを掃除する場合のように機械を運転しなければ作業を完全には行うことができない場合等をいい、また、「覆いを設ける等」の「等」には作業に「十分な長さの用具を使用する」ことが含まれると解される。
会社において、本件コンベアの点検清掃作業のうちの本件コンベアを稼働させながら行う作業を行う場合に、コンベアのトラフ全体に覆いをする安全配慮義務があったとまで認めることはできない。
損害賠償請求認めず。

業績悪化で再雇用社員に勤務日削減の提示(週5→週3)⇒労働者が拒否して雇止め無効!バックペイ700万円の判決(横浜地裁)前のページ

ピックアップ記事

  1. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  2. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  3. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  4. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  5. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    給与ダウンが不満で出勤拒否 →懲戒解雇は有効とされた判決

    大阪地裁R1.12.10派遣会社が、エンジニアを派遣社員として月給5…

  2. 判例・裁判例コラム

    解雇事由調査のための休職命令と賃金支払義務

    東京地裁R3.5.28会社が解雇理由の調査のために従業員に休…

  3. 判例・裁判例コラム

    札幌地裁H11.9.21

    零細企業の営業部員が帰宅中の事故で脳挫傷等と診断。休職期間満了時も左…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    職場内の人間関係を理由に休職者の復職を認めないことは可能?
  2. 判例・裁判例コラム

    在宅勤務の権利を主張し、出社指示に従わない従業員の解雇
  3. 判例・裁判例コラム

    解雇後に会社経営を始めた従業員からのバックペイの請求について判断した事例
  4. 判例・裁判例コラム

    在職中の成果物を削除した退職者に対して会社が損害賠償請求した事例
  5. 判例・裁判例コラム

    調剤薬局で患者の感情を害する言動をする薬剤師を解雇した事案
PAGE TOP