東京地裁R5.6.9
管理職としての能力不足を理由に従業員を非管理職に降格させ、賃金を年収1020万相当から920万相当に減額
→会社が賃金を労働者に不利益に変更するには、労働者との合意又は就業規則等の明確な根拠が必要。この点、就業規則には、職務等の変更に伴い降給があり得る旨が記載され、「その場合、新給与は、新職務に対応する給与レンジ内で決定する」と記載されている。ところが、給与レンジの額は就業規則に定められていない。
一方、社内のイントラネットに掲載され、従業員に周知されていた資料には、管理職から非管理職に変更となる場合の変換式について「変更前の月例基本給×12÷125%÷18」と明記されている。しかしながら、就業規則には、この資料への委任規定はなく、資料が就業規則の届出の際に労働基準監督署長に届け出られたこともない。また、資料に記載されている変換式も変更前の基本給に応じた単一の解を示すもので、「給与レンジ内で決定する」との就業規則の定めに整合しない。以上によれば資料を就業規則の一部と認めることはできない。賃金の減額は無効と判断。