判例・裁判例コラム

「担当職務の見直しに合わせ、給与の見直しを行う場合がある。見直し幅は、都度決定する。」と定める規定の効力

東京地裁H28.7.20

エレクトロニクス事業などを事業とする東証一部上場企業(当時)が賃金規程に「担当職務の見直しに合わせ、給与の見直しを行う場合がある。見直し幅は、都度決定する。」と定めた。人事開発部長について、採用した人材の定着率が極めて悪く勤務成績が不良であるとして、管理本部課長に降格させた。これに伴い、賃金を月額約67万円から月額約54万円に減額。

→使用者が、個々の労働者の同意を得ることなく賃金減額を実施した場合において、その減額が就業規則上の賃金減額規程に基づくものと主張する場合、賃金請求権が、労働者にとって最も重要な労働契約上の権利であることを踏まえれば、その賃金減額規程が、減額事由、減額方法、減額幅等の点において、基準としての一定の明確性を有するものでなければ、そもそも個別の賃金減額の根拠たり得ない。会社は賃金規程で「担当職務の見直しに合わせ、給与の見直しを行う場合がある。見直し幅は、都度決定する。」と定めているが、減額方法、減額幅等の基準が示されているということはできない。したがって、賃金減額は無効と判断

採用内定後のバックグランドチェックの結果に基づく内定取り消し前のページ

ハラスメント調査への不服を経営陣らに送り続ける社員の解雇次のページ

ピックアップ記事

  1. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  2. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  3. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  4. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  5. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    懲戒解雇の理由はあとで追加できる?

    高松高裁R4.5.25社会福祉法人でパワハラを理由に管理職を懲戒解雇…

  2. 判例・裁判例コラム

    就業規則に不備があれば退職金2回もらえる?

    大阪地裁R6.11.7出版会社が、就業規則で定年を60歳と定…

  3. 判例・裁判例コラム

    実質個人経営の居酒屋を経営する会社代表者の責任

    東京地裁R5.3.23居酒屋で勤務する33歳の従業員が突然死…

  4. 判例・裁判例コラム

    パソコンの共有フォルダに保存した就業規則の効力

    東京地裁H31.3.25 派遣会社が、就業規則で退職後に自社の機密情…

  5. 判例・裁判例コラム

    雑に作成された退職時の秘密保持誓約書が無効と判断された例

    東京地裁R6.2.19退職する従業員に、「退職後3年間は、貴社所属時…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    「頭おかしいから。」「水商売やってた人間が。」などと部下を罵倒した支配人を普通解…
  2. 判例・裁判例コラム

    賃金規程に基づいてした給与等級引き下げの効力について判断された事例
  3. 判例・裁判例コラム

    職務等級制度における給与減額・配置転換の限界
  4. 判例・裁判例コラム

    熱中症で亡くなった従業員の遺族からの損害賠償請求
  5. 判例・裁判例コラム

    復職のために会社が指定した医師作成の証明書を要すると定める就業規則の効力について…
PAGE TOP