判例・裁判例コラム

試し勤務の提示を拒否した従業員の復職可否判断

静岡地裁R6.10.31

メンタルヘルス不調者の復職にあたり、産業医が「試し勤務を経て正式復職するのが望ましい」と意見。会社は試し勤務中の賃金を県の最低賃金とすることを休職者に提案。休職者が断ったため、賃金については継続して協議することを繰り返し申し入れたが、合意に至らず、休職者は試し勤務をしなかった。そのため、会社は休職期間中に復職できなかったことを理由に退職扱いとした。
→治癒を主張する労働者は、会社による治癒の認定に協力する義務がある。正当な理由のない協力拒否の場合には解雇も正当化される。本件では長期間休職しており、試し勤務を命じる必要性、合理性があった。また、試し勤務の内容はレポート作成のデスクワークであり、復職後に行う予定の業務より、負荷の程度が大きく軽減されたものだった。試し勤務の期間も休職期間であり賃金請求権が発生しないのが原則だから、労務の内容に応じて減額支給されることは不当とはいえない。復職させなかったことが会社の債務不履行または不法行為とはいえないと判断

住民票記載事項証明書の不提出を理由とする解雇の有効性前のページ

ジョブ型雇用の従業員について、担当業務が廃止された場合の解雇の有効性次のページ

ピックアップ記事

  1. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  2. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  3. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  4. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  5. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    過半数代表選出にあたり無投票者は有効投票にみなすと定めた場合の効力

    松山地裁R5.12.20大学が過半数代表者選出規程に、信任投票で投票…

  2. 判例・裁判例コラム

    ジョブ型雇用における能力不足解雇

    東京地裁H28.6.1海外証券会社の日本法人が営業職を解雇→本件労働…

  3. 判例・裁判例コラム

    出勤停止の懲戒処分通知書を従業員が返送した場合の効力

    東京地裁R6.4.24出勤停止の懲戒処分を受けた銀行職員が通知書を受…

  4. 判例・裁判例コラム

    アルバイトをシフトに入れなかった使用者の責任

    東京地裁R6.3.26コロナ禍で休業していたラーメンチェーン…

  5. 判例・裁判例コラム

    役付手当を固定残業代と位置付ける賃金規程の効力について判示した事例

    名古屋高裁R2.5.20賃金規程に「役付手当は、課長、所長代理以上を…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    試用期間中に逮捕・勾留された従業員を解雇した事案
  2. 判例・裁判例コラム

    送別会帰りのタクシーでのセクハラについて会社は使用者責任を負う?
  3. 判例・裁判例コラム

    部下の上司に対するハラスメントについての懲戒処分
  4. 判例・裁判例コラム

    会社からタイムカード打刻を義務付けられている営業部長の管理監督者性
  5. 判例・裁判例コラム

    ハラスメント調査への不服を経営陣らに送り続ける社員の解雇
PAGE TOP